公庫と協会の、和解実例・・・


日本政策金融公庫や信用保証協会などといった公的な金融関係機関も、ご高齢者や身障者が債務者の場合は、十分な配慮を示します。

状況を理解し、あまり無茶な対応はとらず、実施的な債権放棄や正式な和解もあり得るということなのです。

ただ、公的な金融関係機関が債権者ですから、一般的には債権放棄や和解などは出来ないと考えられる方も多いと思います。

しかし、実社会においては、様々な場面・状況において成立していますので、そんな事例をまとめてご紹介いたします。

 

まずは、日本政策金融公庫の、保証人としての追及についての事例です。

Aさんは、2代目として製造業を営んでおられましたが、メーカーの発注単価の圧縮で業績が悪化し、日本政策金融公庫からの借入金について期限の利益の喪失をしてしまいました。

事業は破綻した訳ではありませんが、従業員は全員解雇して、Aさんご夫婦だけで事業を切り盛りしておられ、売上はほとんど無いという状況です。

期限の利益の喪失後、日本政策金融公庫とは何度も交渉を重ね、厳しく弁済も迫られましたが、弁済すれば生活もままならない状況ですから、1円も弁済できていないのが現実です。

過去の交渉において、破産も勧められましたが、破産すれば収入も全く無くなりますし、破産する費用さえ不足していますから、このまま事業を続けるしかありません。

ある日、日本政策金融公庫の担当者は、面白ことを口にしました。

『現実的には、とっくに事業は破綻しているのですから、破産出来ないならば休眠されたらどうですか? 休眠されたら、僅かな一時金を支払うことで、Aさんを保証人から外しますよ・・・。』

具体的には、会社の休眠手続きをして、10万円を一括で支払えば、それで債務は棚上げするということなのです。

この頃には、僅かに続いていた仕事も途絶えていましたので、Aさんは担当者の提案を受け入れられました。

その後、定期的に、形式的な督促が会社に届きますが、保証人としてのAさんへの督促は一切ありません。

これも、一種の債権放棄といえるでしょう。

これとよく似た事例は、けっして少なくありません。

これも日本政策金融公庫の事例になりますが、期限の利益の喪失後、既に6年が経過しています。

3代目として、小売業を経営されていたBさんは、バブルの崩壊の影響を受けて業績を悪化させ、暫くは頑張り持ちこたえましたが、実施的に経営を破綻させてしまいました。

しかし、Bさんの昔からのネットワークは健在で、細々ではありますが、何とか事業は継続しています。

日本政策金融公庫は、誠意は見せるが、ほとんど弁済はできないBさんに困っていました。

事業は継続しているが、請求しても弁済できず、差押する資産も無いという状況に、日本政策金融公庫は打つ手がありません。

そんな状況で、『廃業されたら、もう請求は停止します・・・』と担当者が言ったのです。

Bさんは、その言葉を受けて現事業を停止されると、たしかに請求は停止しました。

その後も、ネットワークを活用して、個人経営として今まで通りに事業を維持されています。

福井のCさんも、よく似た流れで、将来的な債務の消滅を示唆されたのです。

Cさんは、8年ほど前に期限の利益の喪失をして、信用保証協会に代位弁済をされました。

その後、事業は廃業したという形態において、債務者である旧事業者名で僅かな弁済を続けておられます。

ある日、信用保証協会から連絡があって訪問すると、担当者から、『今後は、保証人であるCさんの個人名で弁済してください・・・』と、言われたのです。

Cさんは、言われるままに、Cさんの個人名で弁済をすることに変更しました。

これは、5年先という将来的に、時効期間を完成させるということになります。

主債務者ではなく、保証債務者名で弁済する訳ですから、5年後には主債務者の時効期間が完成するのです。

それにより、実質的に債権放棄をするということになるのですが、信用保証協会が自ら、長期的な債権放棄計画を示した珍しいケースだといえるでしょう。

 

この様に、日本政策金融公庫や信用保証協会等といった公的な金融関係機関の、実質的な債権放棄は存在しています。

形態は少し変わっているのかもしれませんが、実質的な債権放棄であるのは間違いありません。

ひょっとすれば、我々も債権放棄が可能になるのかもしれませんから、情報として大事に持っておいてください。

次回は、特殊な債権放棄の事例をご紹介いたします。

 

 

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