日本政策金融公庫が、債権回収を放棄・・・


日本政策金融公庫や信用保証協会といった政府系の金融関係機関についての、債権放棄への取組みについてご紹介をしてきました。

本来は、債権放棄をしないばすが、現実の社会では取組んでいるという事実について認識をいただけたでしょう。

しかし、ご紹介してきた事例は、債権放棄の前提として、債権回収が難しいという状況がありました。

ところが、まだまだ債権回収の可能性があるにも関わらず、債権放棄をした珍しい事例をご紹介したいと思います。

 

もっと早くに、ご説明すべきでしたが、『債権放棄』と『債務免除』とは、同じ意味になります。

請求する権利を持つ債権者が、その請求する権利を放棄することを『債権放棄』と呼びます。

対して、請求される義務を持つ債務者が、その請求される義務を免除されることを『債務免除』と呼びますから、裏表の関係ということになるのでしょうか。

債権放棄というのは債権者側の行為で、その行為が発生することにより、債務者側に債務免除が発生するということになり、結果、同じ意味ということになります。

債務者としては、是非、債務免除をしてもらいたいでしょうが、債権者としては、簡単に債権放棄など出来るはずはありません。

血税を原資とする、公的な金融関係機関としては、可能性が有る限り、とことん債権回収に取り組まなければなりません。

この段階で、債権放棄などありえない・・・・・はずだったのです。

ところが、債権回収を出来る可能性が高いのに、ある段階で、債権回収を諦めて和解する事例もあるのです。

そんな、ちょっと信じられない事例をご紹介いたします。

 

地方都市で、製造業を営んでおられるA社は、先代の時に再生を前提とした法的手続きをして、その後も事業を継続されてきました。

経営者を先頭に努力し、その後、事業は随分と改善をしてきました。

しかし、法的手続きをしたときの、信用保証協会に代位弁済された負債は、ほとんど減っておらず、財務内容としては改善をしていません。

財務諸表に目を凝らしていた経営者は、ふと、あることに気付きます。

そう、信用保証協会に、弁済をした記憶が無いのです。

法的手続き以降、忙しさにかまけて気に掛ける余裕もなかったのですが、信用保証協会からは定期的な葉書の請求が有るだけで、それに対しての弁済をしていません。

しかも、法的手続き以降ですから、約12年は経過しています。

既に、時効期間が完成していると判断した経営者は、時効の援用に踏み切られたのです。

ところが、信用保証協会は、時効期間は完成していないと主張してきます。

双方の弁護士同士での交渉になりましたが、時効について譲る気配はありません。

このままでは、法廷で決着をつけるしかないかと思われた頃、突然に、信用保証協会がある提案をしてきました。

和解です。

債権元本額の20%を支払えば、残債は放棄するという内容になります

信用保証協会は、時効については自信満々であり、時効期間が完成していないのなら、和解する必要などありません。

こちらとしても、絶対に時効期間が完成しているという根拠もなく、どうしようかと思っていた矢先に和解の提案ですから、渡りに船といえるのかもしれません。

弁護士と相談し、信用保証協会の和解の提案を受け入れることにしました。

信用保証協会としては、今まで弁済されなかった債権について、一気に20%も回収出来たのですから、納得出来る結果だったのかもしれません。

こちらとしても、債権元本額の80%を免除してもらえるのですから、こんな有難い話はありません。

双方、納得の債権放棄であり、債務免除だといえるでしょう。

 

製造業として、工場は必要不可欠な資産です。

工場を失えば、事業の継続など不可能であり、経営は途端に破綻するしかありません。

そんな貴重な工場が、日本政策金融公庫(旧中小企業政策金融公庫)からの借入についての担保に入っています。

そして、その借入は、十数年前に期限の利益の喪失をして不良債権となり、担保である工場を守るために、その後も弁済を続けています。

その弁済額は、毎月40万円程であり、中途半端な金額ではありません。

地域では有力な企業で、最近は業績も向上しており、完全復活も視野に入る状況になってきたといえますが、公庫への弁済が負担で、資金繰りは厳しい状況が続き、新たな設備投資など出来る状況にはありません。

経営者は、この状況を何とか打開しようと、1年ほど前から日本政策金融公庫と交渉を開始されました。

債務免除の交渉です。

このままでは、製造業であるにも拘らず設備投資ができなくて、新たな展開が開けない。

その延長線上で、売上が確保できなければ、資金繰りが破綻して倒産するしかなくなる。

そうなると、地域経済に大きな悪影響を与えてしまう・・・。

この様な根拠で、債務免除の交渉をされたのです。

当然、簡単な交渉だとは考えていませんが、藁にもすがる思いで取組まれました。

そうすると、日本政策金融公庫も、完全に否定をしないどころか、ある意味、前向きな姿勢も見せてくれました。

結果、交渉には1年ほど掛かりましたが、元本残債件の40%を支払うことで、残りの60%は放棄してくれる和解条件で合意できたのです。

しかも、担保を残すことができたのです。

工場を新たな担保として、民間の金融機関から資金を借り入れで、和解金は支払うことができました。

これで、資金繰りは極端に楽になり、事業も守ることかできました。

 

事業継続をしており、弁済が可能な状況の債務者が、和解により債権放棄をしてもらえるのは希有な事例だといえます。

この2つの事例に共通するのは、

  期限の利益の喪失後、長時間が経過している・・・

  期限の利益の喪失後も、誠意ある姿勢を見せてきた・・・

  現状の負債のままでは、事業継続に不安が有る・・・

  倒産した場合、地域への社会的影響が大きい・・・

こういう共通点が有り、それに対して債権者も配慮を示してくれたのでしょう。

回収しようとすれば、まだまた回収が可能であった筈なのに、一時金の回収だけで和解したのです。

この事実は、極めて大きな意味を持つと思います。

 

 

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