財産開示手続が増加・・・


 

平成15年に、初めて財産開示手続が運用開始されたとき、我々は頭を抱えてしまいました。

無い袖は振れない状況を構築し、これで強制執行などから資産を守ることができると思っていたからです。

それなのに、資産の全てが炙り出されて、強制執行の対象となってしまうという手続が開始されたのですから、今までの努力が無駄になってしまいます。

債権者に知られるはずのない資産が、財産開示手続により明らかになってしまうようになり、その後の債権回収はどのように変化したのでしょうか・・・。

 

 

最近、財産開示手続や第3者からの情報取得手続が、随分と増加をしています。

債権回収において、有効な手段であると認識をされたため、今後も増加をし続けるだろうと思います。

いつ金融事故に遭遇するか判らない中小事業者にとって、これらの手続きについて理解を深めておく必要があると思いますので、対応方法も含めて復習をしたいと思います。

金融事故になると、金融機関などの債権者は、様々な手段で債権回収を図ります。

代位弁済や担保権の実行などは無条件で実行をされ、最善の結果を求めて債権者はあらゆる努力をしてきます。

しかし、債務者が自ら弁済しようとしない限り、債権回収は簡単ではありません。

多くの場合は順調に債権回収ができないため、最終的な手段として、もっとも効果の期待できる差押・強制執行などを実施してくることになります。

しかし、債務者に、対象となる資産があるとは限らず、債権回収の対象となる資産がなければ、強制執行をしても効果は得られないのです。

本当に債務者に資産が無いのであれば、仕方がないかもしれません。

しかし、実は資産は存在しているのに、資産の存在を判り難いようにしている『無い袖は振れない』状況になっている債務者は少なくありません。

債務者も、事業や生活を守るための最低限の予防手段としているのでしょうが、こうなると強制執行の効果は得られなくなってしまいます。

この様な、債務者の作為的な作業で、強制執行の効力を低下させないために、平成15年に財産開示手続が運用開始をされました。

債務者に、本当に資産が無いのか、債権者が調べるのはほぼ不可能だったのですが、裁判所の力を借りた手続により、債務者自らに本当の資産を申告させる制度が財産開示手続きになります。

一定の条件の下で申し立てができるので、当初、債権者は債権回収手段として随分と期待をしました。

しかし、実際に申し立てされた件数は、17年間でわずか1000件程度であり、期待を大きく裏切る結果となってしまったのです。

その原因は、従わない場合の罰則が、過料として30万円と低額であったため、無視する債務者がほとんどだったからになります。

そこで、令和2年4月に、民法改正に合わせて財産開示手続は見直され刑事罰となり、罰金50万円もしくは懲役6か月以下となったのです。

刑事罰となったわけですから、これで債務者も無視などできなくなりました。

債務者は、財産開示手続に、真摯に真正面から対応するしかなくなったのです。

では、改正された財産開示手続に対して、債務者はどの様に対応すればいいのでしょうか。

そのポイントは以下になります。

 ① 開示の対象は、申立て時点での財産であり、過去の財産は関係ありません。

 ② 財産開示の手続きであり、財産の動きや有無などを追及する手続きではありません。

 ③ 刑事罰という事実を理解し、誠意を持って対応しなければなりません。

 ④ 対応の準備は、申立て前(できれば債務名義取得前)に終わらせる。

 ⑤ 財産開示手続申立て以降、財産の保全はしない。

 ⑥ 全ての財産をオープンにし、正々堂々と立ち向かう。

財産開示手続は、無視したり逃げたりできるものではなくなりましたので、制度をしっかり理解し、事前の準備を完結させ、前向きに対応することが最善の結果につながります。

 

財産開示手続の改正に合わせて、第三者からの情報取得手続という制度も用意されました。

第三者からの情報開示手続とは、裁判所が、債務者の財産の所在を知りえる銀行などの第三者に命じて、債務者の財産を開示させる手続きになります。

財産開示手続をされても、債務者が自ら正直に財産・資産について開示するとは限らないため、債権者の申立てによって、債務者の財産の情報を把握している関係者に、裁判所がその財産・資産の情報開示を指示する制度です。

実は、財産開示手続よりも、債務者にとってはこの第3者からの情報取得手続きがやっかいな制度だといえます。

債務者の意志に関わらず、裁判所の職権によって強制的に、主要な財産の存在が白日の下にさらけ出されてしまうのです。

不動産,預金口座,上場株式・国債などといった主要な財産が、債務者の意志に関わらず、債権者に知られてしまうのですから、大変なことだといえるのではないでしょうか。

ただ、第3者からの情報取得手続きは安易に着手されるものではありません。

債権者が強制執行を開始できない場合や、功を奏しない場合などに活用は限定され、債権回収の手続きを経ていなかったり、強制執行の努力をしていなかった場合は着手できません。

一定の要件の下で実施される手続ですから、まず理解して、慌てることなく対応するべきだと思います。


旧来の手続きでは、不動産や預金口座などの主要な財産も、簡単に債権者に知られることはありませんでした。

ところが、財産開示手続と第三者からの情報開示手続により、財産の存在が一定の手続きによって知られ、具体的な強制執行が可能になってしまったのです。

この変化は、債権債務処理,債権回収において、基本を覆すような大変な変化だといえます。

債務者にとっての予防策は、早い段階の資産の保全対策のみということになり、しかも、無剰余対策か、所有権の移転のみしか方法はありません。

それでも、早い段階での対策は、今まで変わらず効力があるのは間違いありません。

これからの、金融事故に直面した債務者は、これらの制度を理解し、タイムリーに具体的な準備をしてください、

債権者は、財産開示手続と第3者からの情報取得手続を、債権回収において有効に活用しようとしているのです・・・。

 

 

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