会社を整理して、残った借金は最後にどうなるのでしょうか。
破産を回避し、私的な任意整理を選択して処理をしても、借入金は膨大な負債として残ります。
取引先が連鎖倒産などするかもしれないのに、この借金が処理できないと判断したために、仕方なく破産を選択される経営者も少なくないでしょう。
しかし、倒産後に残った借金の処理は、現実的にはそれほど難しく考える必要ないのかもしれません。
破産をすれば、借金は無くなります。
それまでの、地獄のような資金繰りから解放されることを考えれば、夢の様なことだといえるでしょう。
その後の人生を考えても、借金を弁済する必要が無くなるというのは、金銭的に幸せな生活を掴める可能性が高くなるということだろうと思います。
しかし、破産をすれば何も残りません。
経営者としての最後の責任を放棄することで、プライドはズタズタになってしまうでしょう。
事業は当然に守れないでしょうし、資産等もなくなってしまいます。
何よりも、社会的弱者を守れないことで、社会的な信用さえも消失してしまうのです。
だから、破産を回避し、任意での整理をするべきだということになります。
しかし、任意整理だと、金融機関からの借金などは棚上げをすることになり、いつまでも処理できずに残ることになってしまいます。
その後も、当然に、継続して支払いの督促をされることになるのです。
この様に、借金がいつまでも残るというのが、任意整理を選択した場合の最大の問題だといえます。
さて、残った借金に対して、いつまでも債権の回収は続くのでしょうか。
ある事例を基に、実際の現場では、任意整理後の借金がどうなるのか確認をしていきたいと思います。
建設業を経営されていた経営者は、20億円ほどの負債を抱えて倒産をしました。
原因は、過剰借入の弁済による資金繰り悪化になります。
徐々に資金繰りは悪化し、いずれは返済できなくなるのが分かっていましたから、債権債務処理について経営者は勉強をしました。
当初は、破産か夜逃げしか選択肢は無いと思っていましたが、勉強したことで考え方を180度変更して、任意整理を選択されました。
その理由は明確で、破産をすれば、取引先が連鎖倒産する可能性が高かったからです。
その時点での債務は、取引先の買掛金などの商取引債務が約2億2000万円、金融機関からの借入などの金融債務が17億9000万円ほどになります。
破産をすれば、取引先などへはほとんど配当ができない状況だったといえます。
そのうちの、金融債務の内訳は。
㋐ メガバンク プロパー① 約4億1000万円 担保あり
㋑ メガバンク プロパー② 約2億7000万円
㋒ メガバンク 保証協会付き① 約2億2000万円 担保あり
㋓ メガバンク 保証協会付き② 約1億9000万円 担保あり
㋔ 地方銀行 プロパー 約2億円 担保あり
㋕ 日本政策金融公庫① 約1億5000万円
㋖ 日本政策金融公庫② 約7000万円
㋗ 住宅金融公庫 約2億8000万円 担保あり
以上の状況で、合計で17億9000万円ほどの金融債務になります。
売上が12億円ほどの会社ですから、過剰どころか異常な債務額だといえるのかもしれません。
これらの、膨大な金融債務が、任意整理を選択して金融事故が発生した後に、どの様に処理されていったかを具体的に検証していきたいと思います。
㋐ メガバンク プロパー① 約4億1000万円
不動産の購入資金としての借入で、不動産を担保にしていたが後順位のため、任意売却でも配当はなし。
期限の利益の喪失後、1年ほどで大手サービサーに債権譲渡。
その後、弁済についての交渉が2年ほど続いたのちに、限りなくゼロに近い額で和解して終了。
㋑ メガバンク プロパー② 約2億7000万円
運転資金としての借入で、不動産などの担保はなし。
期限の利益の喪失後、㋐と同じく、1年ほどで大手サービサーに債権譲渡。
その後、弁済についての交渉が2年ほど続いたのちに、㋐と同じく、限りなくゼロに近い額で和解して終了。
㋒ メガバンク 保証協会付き① 約2億2000万円 担保あり
信用保証協会の保証付きで運転資金として借入し、不動産を㋓と共同担保。
期限の利益の喪失後、2か月ほどで代位弁済をされ、債権者が信用保証協会に。
代位弁済後10か月ほどで、不動産を任意売却後、残債務額が1億円に。
その後、連帯保証人個人名で、毎月5000円を弁済。
代位弁済から6年で、商事債権の時効期間が完成。
時効の援用はしていないが、実質は終了。
㋓ メガバンク 保証協会付き② 約1億9000万円 担保あり
信用保証協会のセーフティーネット保証付き融資で借入し、不動産を㋒と共同担保。
期限の利益の喪失後は㋒と同じく、2か月ほどで代位弁済をされ、債権者が信用保証協会になり、代位弁済後10か月ほどで、不動産を任意売却。
残債務額が8000万円になり、その後、連帯保証人個人名で、㋒と合わせて毎月5000円を弁済。
代位弁済から6年で、商事債権の時効期間が完成。
時効の援用はしていないが、実質は終了。
㋔ 地方銀行 プロパー 約2億円 担保あり
不動産の購入資金として借入し、その不動産を担保。
期限の利益の喪失後、1年半ほどで任意売却し、完済。
㋕ 日本政策金融公庫① 約1億5000万円
運転資金として、旧中小公庫系から無担保で借入。
期限の利益の喪失後、具体的な債権回収はなく、5年で商事債権の時効期間が完成。
時効の援用はしていないが、実質は終了。
㋖ 日本政策金融公庫② 約7000万円
運転資金として旧国金系から借入し、不動産を第1順位で担保。
期限の利益の喪失後、任意売却を目指すが金額が折り合わず競売になり、2000万円の債務が残る。
その後、弁済について具体的な交渉はなく、競売後5年で商事債権の時効期間が完成。
時効の援用はしていないが、実質は終了。
㋗ 住宅金融公庫 約2億8000万円 担保あり
賃貸マンションの資金として借入し、マンションを担保として提供。
期限の利益の喪失後、任意売却を目指すが金額が折り合わずに長期化。
それから1年半経過後に任意売却により完済。
この様に、和解と時効と担保不動産処分により、17億9000万円の債務は、実質的に全て消えました。
これらの処理において、こちらが負担したのは、担保不動産処分による弁済と、僅かな和解金だけということになります。
時効と和解の活用、この事例は、けっして珍しい内容ではありません。
むしろ、任意整理の結末としては、当たり前のパターンだといえるのでしょう。
債務者は、無い袖は振れない状況ですから、債権者も、それ以上はどうしようないのです。
何年も債権回収に晒されても、1円も返済できていない債務者がとほとんどでしょう。
中には、行方さえ定かではなく、連絡のつかない債務者も珍しくありません。
そんな債務者に対して、債権回収を図るために、いつまでも手間暇かけて追及しも、無駄でしかないということなのです。
法的な手続きに頼らなくても、いずれ、債権回収の手続はを終えるしかないというのが、現場の理屈ではないのでしょうか・・・。
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