金融事故後の放置・・・


 

『無い袖は振れない・・・』とは、お金に関して使われる言葉で、お金がなければ、出したくても出せないという意味になります。

着物を着て、袖を振ろうと思っても、袖がなければ振れないというところからきた言葉で、借入金を返済する場面において、返済したくても、返済できる資金がなければ返済できないということです。

債権を回収しようという場合は、債務者が無い袖は振れない状況で、支払うべき資金や資産を持たなければ、債権の回収はできないということになります。

任意整理において、無い袖は振れない状況になって整理を図る場合など、金融事故になった後にどの様な対応がなされ、債務者としてどうなっていくのか・・・不安であると共に、反面、興味深いところではないでしょうか。

 

会社の継続は困難かもしれませんが、破産をするつもりはありません。

経営者には責任があり、最後までその責任を全うしなければならないからです。

家族同様の従業員や、長年お世話になった取引先の、今後の人生や事業を破綻させるわけにはいきません。

家族の生活や、自宅や先祖伝来の不動産など、守れるなら守りたいものも沢山存在しますから、破産はできません。

破算だけでなく、その他の法的手続きを執ることもありません。

経営者の責任を果たし、守るべきものを守るために、法的な力は借りずに、経営者自らが任意で事業を整理するのです。

従業員には、給与など払うべきものは全て払いますし、できれば、次の就職の確保なども水面下で手伝います。

仕入先などの取引先にも、買掛金については支払える限り支払って、最低限の迷惑に抑えます。

しかし、金融機関等には、弁済できません。

破産を検討するほどの経営状況で、資金繰りは極端に悪化した資金不足であり、金融機関等への弁済は、今は、棚上げするしかありません。

払いたくても払えない『無い袖は振れない』状況ですから、この状況を脱するまで、金融機関に待ってもらうしか方法はないのです。

そう、主債務者である会社も、保証債務者である経営者も、既に、『無い袖は振れない』状況に陥ってしまっており、責任ある経営者としては、致し方のない選択ということになります。

これで、従業員や取引先に対しては、最低限の責任を果たせたといえますが、保証人である経営者には、保証債務が大きく圧し掛かってきます。

既に、経営者は無い袖は振れない状況になっていますが、主債務者が実体を無くした状況において、一気に全ての保証債務が保証人に請求され、処理が終わるまで長期間に亘って続くのです。

たとえ、経営者の責任は果たせたという満足感は得られても、今後の、保証人である経営者の人生を考えれば、不安どころか恐怖を覚えても不思議でないでしょう。

訳知り顔の人が、無い袖は振れない状況であれば、『怖くないよ、大丈夫だ・・・』といってくれます。

しかし、怖くないといわれても、金融機関に弁済ができずに金融事故になると、どの様な対応がなされるのかさえも分からず、安心など出来るはずはありません。


何故、『無い袖は振れない』状況であれば、債権回収に対して安心で安全なのか・・・?

安心を確保するため、金融事故前後からの動きを踏まえ、具体的に考えてみたいと思います。

金融機関への弁済ができませんから、早い段階で期限の利益の喪失をすることになります。

債権回収はできないと、債権者である金融機関が判断すれば、期限の利益の喪失をすることになるのですが、利払いを3回停止することが最も多い理由となっています。

実際に期限の利益の喪失をすると、今すぐに全額を弁済しろという内容証明郵便が届き、正式に金融事故ということになります。

これにより、今後は不良債権として扱われることになり、金融機関は正式に債権回収に着手しますから、この期限の利益の喪失の内容証明郵便は金融機関の宣戦布告の様なものだといえるでしょう。

今後は、様々な債権回収が具体的に実施され、債権者と債務者との間で、債権の回収についての戦いが始まるということになるのです。

実際、どの様な債権回収が実施されるのかですが、金融事故の直後においては・・・

・信用保証協会などの保証機関による代位弁済
・任意売却もしくは競売などによる担保権の実行

この2点については、金融事故後において、まず無条件で実行されるものですから、当初より頭に入れてシミュレーションしておくことで不安などはありません。

場合によれば、仮差押えなどをしてくる債権者もあるかもしれませんが、対象となる資産のない『無い袖は振れない』状況ですから、何も不安はないでしょう。

金融事故になり、次の段階に進むと・・・

 ・訴訟や支払督促などの裁判上の手続き
 ・サービサーへの債権譲渡

これらの手続きが実施されますが、サービサーへの債権譲渡は、債権回収のプロ中のプロに債権者が変わるだけのことであり、無い袖は振れない状況では問題はありません。

訴訟などの裁判上の手続きは、必ず負けるという結論ですから何も心配する必要はありませんが、大事なことは『債務名義』をとられて、財産開示手続や差押えなどといった次の段階に進む可能性に注意することです。

債権回収の後期の段階になると・・・

 ・債務者の資産を知るための財産開示手続
 ・最も効果的な債権回収手段である差押

最後の債権回収段階で、これらの手続きが実施されますが、財産開示手続は債務者の資産をオーブにする手続きになりますので、事前に理解を深め対応しておく必要があります。

しかし、理解さえできておれば、準備をして正面から対応することで不安を持たれる必要はありません。

差押は、最強の債権回収手段だといえますが、対象となる資産が無かったり、資産の所在が不明だったり,所有権者が違ったりすれば、その効果は得られません。

最終で最も効果的な債権回収手段である差押えも、無い袖は振れない状況であれば、何ら効果は得られないというのが現実なのです。

差押を活用しても回収ができない債権は、最後はどうなるのでしょうか。

完済などは出来ないでしょうから、考えられるのは以下になります。

 ・放置
 ・時効

債権者も、長期間に亘り1円も回収できない債権について、手間暇を掛け続けてまでして、いつまでも回収を図るようなことなどはしません。

いずれは、債権回収を諦めて、放置するということになります。

そして、放置の延長線上には、時効という手続きが浮かびあがってくるということなのです。


この様に、金融事故後の動きを追ってくると、無い袖は振れないという状況が、いかに有効かご理解いただけると思います。

ある意味、債権回収の効力を喪失させるほどの効果があるということになるのです。

その効果は、最終的には時効などにより、債権の存在さえも無くしてしまいます。

債務者の立場として、任意の整理を考えた場合、無い袖は振れない状況であれば、不安を抱く必要などないということをご理解いただけるのではないでしょうか。

 

 

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