財産開示手続について、しっかりと把握し直す必要があるようです。
平成15年に施行され、当初は債権回収の効果について期待もされていましたが、ペナルティーが軽いために、活用される機会の少ない制度となっていました。
その財産開示手続が、昨年の4月1日、民法が改正とともに見直しをされ、制度の強化が図られました。
その結果、債権回収の手段として効果の期待できる様になり、活用される機会が急増してきたようなのです。
昨年、令和2年の秋ごろから、財産開示手続についてのお問い合わせが入るようになりました。
民法改正により、財産開示手続が見直されてから半年頃の晩秋には、顧問先が実際に財産開始手続をされました。
それ以降も、財産開示手続に関するお問い合わせは続きましたが、今年の春以降は随分と増えてきたようです。
ペナルティーが強化されたとともに、債務者の財産を調べることのできる『第3者からの情報開示手続』も用意されましたので、債権の回収にとって極めて有効な手段になったのは間違いありません。
今後、債権回収の対象となる可能性のある債務者にとって、財産開示手続をスルーすることは出来ないようです。
施行以降、幾つかの事例も確認できましたので、しっかりと理解をしていただくために、改正版財産開示手続について見直しをしてみたいと思います。
債権回収の手続きにおいて、債務者が、自ら弁済しようとする意思がなければ、債権者は法的手続きを活用して債権回収を図るしか方法はありません。
しかし、債権者の最後の債権回収手段である強制執行も、債務者に資産がない《ない袖は振れない》状況であれば、成果は得られないでしょう。
どこに、強制執行の対象となるべき債務者の資産があるのかは、債権者が自ら調べなければならなく、守秘義務の観点から簡単ではありません。
したがって、債務名義(強制執行をできる権利)を持っていても、強制執行によりその効力が発揮できないというのが大きな問題だったといえます。
その問題を、裁判上の手続きにおいて、債務者に自らの財産・資産の状況を開示させるための制度を財産開示手続といいます。
平成15年に新設された制度で、当初は債権回収手段として期待もされたのですが、過料が30万円という低額に設定をされていました。
そのため、過料を払った方が『得』という現実が多く、債務者もその様に判断されることが多く、活用事例は少なかったといえます。
ほぼ、効力は期待ではないと判断されたせいか、平成15年から令和2年の17年間で、その活用は僅か1000件程度に留まっていました。
そのために、昨年4月の民法改正において、大幅に見直しをされて強化されたのです。
大きな変更点は、改正前は行政罰だったものが、改正後は刑事罰に変更されてペナルティーが強化されたという点になります。
行政罰としての過料30万円が、改正により、罰金50万円以下もしくは懲役6か月以下の刑事罰に変更をされたのですから、大きな脅威になったといえます。
したがって、財産開示手続に真摯に対応し、欠席したりすることのないようにしなければなりません。
もう1つの、債務者にとっての脅威が、『第3者からの情報開示手続』になります。
第3者からの情報開示手続とは、裁判所が、銀行などの第3者に命じて、債務者の財産・資産情報を提供させる制度のことです。
財産開示手続をされても、債務者が自ら正直に財産・資産について開示するとは限らないために、債権者の申立てによって、債務者が資産を保持している情報を把握している関係者に、裁判所がその財産・資産の開示を命令する制度のことになります。
判り易く表現すれば、強制執行を有効に実施するために、裁判所の命令により、債務者の所有する資産を把握するために調査できる様になったということです。
強制執行が開始できない場合や、功を奏しない場合にのみ活用できる制度で、何ら債権回収の手続きを踏んでいなかったり、強制執行の努力をしていなかった場合は着手できません。
そして、その情報取得の対象となる資産が、『不動産』,『預金口座』,『給料・報酬』『上場株式・国債』の4種類になります。
不動産については、財産開示手続の経由が条件になり、情報取得先としては法務局が挙げられます。
情報取得の開示内容は、不動産の所在地や家屋番号になりますから、情報が取得できれば強制執行は容易になります。
預金口座については、財産開示手続の経由は不要で、情報取得先としては銀行や信金信組などの金融機関が挙げられます。
情報取得の開示内容は、債務者名義の口座の支店名,口座種類,口座番号,残高になり、これも強制執行は容易になります。
給与・報酬については、財産開示手続の経由が条件となり、情報取得先として市区町村,日本年金機構,公務員共済組合などが挙げられます。
情報取得の開示内容は、勤務先の有無,勤務先名称,勤務先住所等になります。
ただ、給与・報酬についての情報取得は、養育費などに限定され、貸金や売掛金といった債権回収では活用できません。
この第3者からの情報取得については、債務者にも通知をされ、不動産・給与債権の情報提供については、情報提供決定と同時に通知で、預金口座などは決定後1か月で通知されることになっています。
第3者は、情報提供命令が届いてから2週間以内に、裁判所に情報提供書を提出することにもなっています。
この様に、財産開示手続きは、第3者からの情報取得手続きも併せて、債権者が債権回収をするにおいて極めて効果的な手段になっているといえます。
逆に、債権回収をされる債務者側からすれば、恐ろしい脅威であるといえるのかもしれません。
ただ、むやみに恐れることはありません。
① 事前の予防対策を徹底しておく。
② 訴訟・債務名義取得前に、予防保全を終了させておく。
③ 財産開示手続申立以降、資産保全をしない。
④ 財産開示手続きには、正々堂々と立ち向かう。
この4点を守ることで、対応は可能であり、何よりも、まず財産開示手続きなどを理解するということが大事です。
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