借金を多く抱えた高齢の父親が亡くなられました・・・。
父親に目ぼしい資産はなく、サービサーが金融機関から譲渡を受けた借金だけが相続資産として存在しています。
息子は、相続放棄をするしかないと判断しましたが、父親は7人兄弟のうえ既に他界された方も少なくはなく、何人相続放棄をすればいいのか判りません。
相続放棄をするには、膨大な手間が掛ると思われますが、ひょっとすると、サービサーと和解を選択した方が効率的なのかもしれません。
亡くなった父親は、中学を卒業すると都会に出て、建設の職人として働き始めました。
積極的な性格で行動力があり、人懐っこいお人柄で周りの人間から好かれ、メキメキと頭角を現していかれます。
若くして自ら事業を興し、不動産事業なども展開し、着実に成功を収められて行きました。
そんな時に、あのバブル経済が勃興します。
様々な金融に絡む資産が、明確な根拠なく高騰しだした時代です。
事業欲の旺盛な父親は、既に不動産事業でも成功していましたから、金融機関の持ち込む収益物不動産を中心に次々に購入をしていきます。
既存の不動産を担保提供することで、購入資金は全て金融機関の融資で賄い、不動産の収益からの弁済ですから、資金繰りに詰まることなどないスキームが成立しています。
ところが・・・。
多くの不動産を購入して資産が膨大に膨らんだ平成2年、突然にバブルが崩壊しました。
それからは、資産価値の低下を前提に、入居率の悪化と賃料の値下げのイタチごっこで、収益性は極端に悪化していきます。
金融機関曰く、何ら負担のない安全な資産構築・・・であったはずなのですが、日々、収入は減少し続け、元本を契約通りに返済することが困難になるまで時間はかかりませんでした。
金融機関から頼まれ、転売目的で購入した収益性のない不動産が、全体の資金繰りの足を引っ張ります。
転売して資金を確保しようとしましたが、購入金額を大きく下回る金額でも買い手の見つからない状況に至り、元本どころか利子さえ支払えない状況に陥った現実に、もはや驚くことさえもありませんでした。
リスケジュールさえ対応できなくなり、正式に期限の利益の喪失をして、つい先日まで笑顔で対応していた金融機関が、当たり前の様に債権回収を仕掛けてきます。
あれほどの不動産も、担保が設定されていたので、任意売却で処分し金融機関の弁済に充当しました。
無担保となった債務は、本業の建設職人で稼いだ賃金から僅かずつ弁済したり、一括和解をしたりしてしのぎました。
バブル崩壊後の、父親の後半人生は、借金を弁済するための30年間だったのかもしれません。
それでも、元本が1億3000万円,遅延損害金が3億ほどの、合計4億3000万円の無担保の借金がサービサー(債権回収専門会社)に残っていました。
父親が亡くなり、息子さんは随分と悩みました。
父親には、相続の対象となるような資産と呼べるものはなく、4億3000万円の無担保債務があるだけですから、当然に相続放棄を選択すべきです。
対象となるお母さんは既に亡くなっておられ、息子さんの3人兄弟が相続放棄をすれば、父親の両親が相続人になってしまい相続放棄をしなければなりません。
しかし、ご両親も無くなっておられますから、父親の兄弟が相続することになるのですが、冒頭でご紹介したように、父親は7人兄弟で、既に亡くなっておられるご兄弟もおられます。
この場合、父親が亡くなる以前に、兄弟が亡くなっていればその子供(父親からすれば甥・姪)が相続の対象となってしまいます。
そうすると、息子たち3人に始まり、父親のご兄弟、さらには甥や姪までも相続放棄が必要になり、大変な手間暇のかかる作業になってしまいます。
それでも、相続放棄をするしかないと悩んでいたのですが、良い方法が頭に浮かびました。
金融機関からサービサーに債権譲渡をされたのは、もう20年程の前になり、債権債務としては劣化しているといえます。
さらに、債権回収の対象となる主債務者は父親であり、保証人は存在しません。
すると、父親が亡くなり、その相続権者全員が相続放棄をすれば、サービサーは債権回収の手段を完全に喪失するということになります。
ということは、サービサーとしては、相続放棄をされるぐらいならば、僅かな金額でも回収できた方が得だという事になりますから、これを根拠として和解交渉をしてみることにされました。
こちらには、何ら臆することなどありませんから、息子さんは堂々と交渉に臨まれます。
交渉といっても、電話での対応で、それも3回ほどという僅かな期間で和解は成立しました。
和解額は60,000円です。
合計4億3000万円の債務が、0.014%の6万円を支払うことで和解ですから、4億2994万円の債権放棄をしてもらったことになるのです。
十数名の債権放棄を考えると、随分と手間暇が省けたことになります。
60,000円の和解額が必要だといっても、相続放棄よりも随分と費用的にも得をしたということになるでしょう。
亡くなった父親などの債務が、相続人にとって大きな問題になる事例は少なくありません。
その様な場合、ほとんどは相続放棄で処理されるようです。
しかし、債権者との状況や、債務者の環境により、この様に処理できる可能性があることも頭に入れておいてください。
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