お得意先様との関係を維持するためには、口座を確保する必要があります。
お得意先様と取引をするために、取引口座を確保するというのは、商売として成立するための大前提でしょう。
そして、お得意先様とお取引ができて、その成果としての売掛金を入金をしてもらうための銀行口座も確保しなければなりません。
これらの口座を確保できなければ、商売自体が成立しなくなってしまうほど重要なので、債権者にとっては、債権回収を狙う上において、口座は格好の対象だといえるのです。
事業と資金繰りを守るために、口座を移すことは珍しくありません。
資金繰りが厳しくなって、債権者の強硬な債権回収の可能性が出てくる場面では、口座を移して売掛金を守る必要がでてくるからです。
得意先から入金される預金口座を、債権者の知らない金融機関の預金口座に移して、差押されないようにします。
得意先との取引を守るために、別会社(第2会社など)に取引口座を移して、売掛金を差押が出来ない様にします。
これらの、預金口座と取引口座の保全は、取引を守り、仕事を守り、会社を守るために、必要に迫られた対策として実施をすることになります。
しかし、こちらの都合だけで実施できるものではなく、得意先の同意が前提となりますから簡単ではありません。
振り込んでもらう預金口座を、新たな口座に代えてほしいとお願いすれば、どうなっているのかと得意先は疑問に思うでしょう。
取引口座を、別会社に移してほしいとお願いすれば、得意先はいったい何があったのかと思うでしょう。
預金口座や取引口座を変更しようとする行為は、信用不安につながり、取引自体が停止してしまう可能性さえあるといえるのです。
だから、多くの経営者は、口座の変更に躊躇されるのだと思います。
躊躇してしまうのも、経営者としては仕方のないことだろうと思いますが、債権回収が現実化している様な状況であるならば、躊躇している暇などありません。
この秋以降、口座を差押えされた案件が2件あったのでご紹介をさせていただきます。
Aさんは、債権者金融機関が、いつ預金口座を仮差押えしてきても不思議ではない環境でした。
しかし、1年弱前に、取引先からの入金口座を変更したばかりであり、その時にも、得意先から変更の理由をしつこく問われた経験があります。
したがって、直ぐにでも変更が必要な状況だとは理解していますが、取引上の信用を考えれば、変更できないという気持ちが強く、Aさんはリスクを理解し不安を感じながらも、変更を先延ばしするしかありませんでした。
不安は的中するもので、案の定、得意先からの入金直後に、債権者から仮差押をされてしまいました。
800万円強の運転資金は使えなくなり、途端に資金繰りは悪化してしまいました。
この段階で、あの時に口座変更をしていれば・・・と、後悔しても後の祭りです。
Bさんは、一部の債務が事故になり、債権譲渡をされて、今はサービサーが債権者になっています。
サービサーとは、弁済について交渉を続けていますが、事業を継続して一定の業績を確保しているためか、弁済について強硬な姿勢で迫ってきます。
最近も、この条件をのまなければ、法的手続きにより回収を図ると脅されたばかりです。
しかし、Bさんの会社は、見るべき資産としては売掛金しかありません。
その売掛金を守るために、第2会社に取引口座を移してもらおうかとも考えましたが、得意先は一部上場会社ばかりであり、そんなお願いをすれば信用不安に直結してしまいます。
幸い、売掛金は、大きな未払い金のある取引先の譲渡担保となっており、その取引先は、長いお付き合いの中で、事業の継続にも理解を示してくれています。
そして、この事実を、サービサーも知っており、売掛金を差押しても、債権回収はできないということを理解もしていますので、現実として売掛金は守られているはずでした。
ところが、サービサーが、突然に売掛金を差押えしてきたのです。
弁済の交渉が、遅々として進まない状況に業を煮やし、回収できないのを承知のうえでの差押であり、単なる嫌がらせだともいえます。
Bさんは、取引先に譲渡担保を実行してもらい、売掛金から未払い金を回収してもらうことになります。
差押を解除してもらう交渉をしても、適当な金額で折り合いがつくはずはないでしょう。
その間に、得意先からは、差押を理由に取引停止を通告されるしかありません。
結果として、倒産するしかなくなるわけですから、あの時、第2会社に取引口座を移す交渉をすべきだったということになるのです。
経営危機に陥った状況で、資産を守ることと、信用を守ることは、両立させるのが難しいようです。
第2会社へ口座を移したり、入金用預金口座を変更したりする行為は、資産を守るという効果はありますが、信用を喪失するというリスクも存在します。
信用喪失を恐れ、資産の保全を後回しにするのは、経営者の心理としては当然かもしれませんが、債権者は、そんな債務者の都合に忖度などしてくれません。
経営危機の状況にもよりますが、債権者との弁済交渉が遅々として進まなかったり、改善の見込みが希薄であったりした場合は、資産を守ることを優先すべきなのだと思います。
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