予想されていたことでしたが、雇用調整助成金が見直しされることになりました。
先の見通せないコロナウイルス禍において、この雇用調整助成金の特例措置の効果は非常に大きなものがありました。
雇用調整助成金の、上限日額15,000円の支給条件という特例措置があることで、中小事業者の雇用が守られ、経営が維持できたといって過言ではないでしょう。
その特例措置の見直しがなされるのですから、一気に中小事業者の経営環境が変化してしまう可能性があります。
最近、ご相談者の決算書を拝見していると、興味深い共通点が見受けられます。
損益計算書において、営業損益では大幅な赤字に陥っているのに、最終利益では黒字となっているのです。
その原因を具体的に確認してくと、営業外収益の大きな金額に行きつきます。
それは、雇用調整助成金や協力金など公的支援金であり、営業赤字をひっくり返すほどに支給され、中小事業者の最終利益を黒字にしている事例が珍しくありません。
それほどに、雇用調整助成金などの支援金は、中小事業者の経営や雇用維持に大きな効果を与えているといえるのです。
けっしてオーバーな表現ではなく、雇用調整助成金の特例措置などは、コロナ禍における中小事業者の生命線だといえるのかもしれません。
ところが、過去最高の感染者数を記録する第7波のコロナ禍において、この生命線の見直しがされるのです。
雇用調整助成金の特例措置である、日額15,000円の支給上限が9月末で見直され、11月末までの予定で12,000円に引き下げられることになります。
その後の12月以降も、本来の上限である8,355円まで、感染状況に留意しながら段階的に特例措置は縮小されていくようです。
この見直しの決定は、雇用情勢が回復基調にあると政府が判断したためのことですが、何か、大きな勘違いをされているのではないでしょうか・・・。
過去においてこの特例措置は、経済状況を留意しながら幾度か延期をされ、この3月末までであった期限も、6月末まで延期されることが早い段階で決まりました。
しかし、次の6月末までの期限については、なかなか延期が発表されず、6月末の期限の間際になってようやく発表されたという経緯があります。
この時、政府が、雇用調整助成金の特例措置の終了もしくは縮小を検討したことは間違いありません。
既に、財政的原資が枯渇しており、特例措置を見直すべき状況に陥っていたということなのですが、コロナ禍の影響や景気の回復がそれを許さなかったようなのです。
ところが、この9月末においては、中小事業者の経営環境に忖度する余裕など喪失し、特例措置を見直すという結論しかなかったということなのでしょう。
当然、政府が主張するような雇用情勢が回復基調にあるという理由ではなく、財政的問題により見直しということになります。
コロナウイルス禍の悪影響を受けてから2年半、無尽蔵に支援金を支給して、中小事業者対策を実施してきたのですから、財政問題が発生して当然だと思います。
その支援により、資金繰りが維持できて倒産回避ができて、中小事業者は救われたという結果がありますから、この財政問題を批判するわけにはいきません。
ただ、中小事業者が本当に厳しい状況に追い込まれている、今、このタイミングでの見直しは厳しいと思います。
今年の春先から、中小事業者の経営状況の悪化が顕著になっていましたが、この年末にかけて、コロナウイルス以外の原因も重なり、更に厳しい状況に陥る可能性が高くなってきています。
今まで、雇用調整助成金の特例措置により、中小事業者の財務は最低限で確保され、雇用も何とか維持できていたのに、その生命線といえる特例措置を、このタイミングで見直して経済は維持できるのでしょうか。
景気は、悪化したままの状況なのです。
この特例措置の見直しが、中小事業者に与える影響は、中途半端なものではないでしょう。
たしかに、11月末までは、上限12,000円として特例措置が維持されるということですが、既に中小事業者は財務内容を劣化させていますから、雇用の維持に影響を与えるだろうことが予想されます。
その後、更に特例措置の上限が引き下げられたり、特例措置自体が停止されたりするとどうなるのでしょうか。
景気回復が進んでいない状況であれば、中小事業者は雇用を維持する理由を喪失してしまいます。
その結果、仕方なく解雇を選択するしかなくなるでしょう。
コロナウイルスの影響により、業績を悪化させた中小事業者が、一気に解雇を実施するだろうことが予想され、景気の悪化したままの市中には失業者が溢れることになるのです。
人員不足に苦労されている業種などは、このタイミングを求人のチャンスだと喜ばれるかもしれません。
しかし、そんな甘い考えを許容してくれないほどに、ネガティブに経営環境は変化していくのではないでしょうか。
失業者の増加は、低迷する消費をさらに悪化させますから、中小事業者に残されたわずかな余裕さえも蝕んでいくのではないでしょうか。
この様な流れについて、政府も十分に認識をしていたはずなのです。
だからこそ、雇用調整助成金の特例措置という制度を用意し、厳しい財政の中でも維持してきたのだと思います。
しかし、政府は考え方を切り替え、その影響を理解しながらも、雇用調整助成金の見直しを決断しました。
コロナウイルス初期の頃のように、中小事業者をあらゆる手段を講じて守ろうという姿勢を改め、自力再生できない事業者は、市場から退場することも仕方なしという姿勢に転じたといえます。
この意味を、中小事業者は、しっかりと認識しなければなりません。
もはや、自らの力で取組んでいくしかないということなのです。
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