政府の施策の限界・・・


 

10年少し前に、あのリーマンショックが発生し、未曽有の世界的不況だといわれました。

当時の民主党政権は、時限立法として『モラトリアム法 (中小企業金融円滑化法)』を成立させ、中小企業の資金繰り確保を図ろうとしました。

借入金の返済条件の変更(リスケジュール)を法制化させた内容であり、中小企業の資金繰り確保に大きく寄与しましたが、モラルハザードだと経済界などから大きな批判を浴びることにもなりました。

しかし、今回の『債務の減免』は、リスケジュールなど比較にならない程にモラルハザードに直結してしまい、金融システムを崩壊させかねない驚くべき取り組みになるのです。

 

我々は、今、置かれている環境について、改めて考え直す必要があるのかもしれません。

この3月になってから立て続けに発表された

  『中小企業活性化パッケージ』・・・
  『廃業時における「経営者保証に関するガイドライン」の基本的考え方』・・・
  『中小企業の事業再生に関するガイドライン』・・・

これらの施策は、読み込みむほど様々な事象が浮かび上がってきます。

そして、それほどに、中小企業を取り巻く環境の悪化が進むと、政府や金融機関等が予測していることが見えてくるのです。

結論から言えば、『中小企業の事業再生に関するガイドライン』などの施策は、中小企業の事業再生を支援するための施策ではなく、スムーズな整理に向けての処理・・・さらには、債権者金融機関が少しでも多く債権回収をするための施策だといえます。

ガイドラインですから法的拘束力はありませんが、今後の中小企業の事業再生についての『指針』となり、様々な場面で活用されると思われますので、これらの施策について客観的に検討してみたいと思います。

まず、これらの施策が用意された背景ですが、これは判り易いと思います。

  ① 中小企業の資金繰り悪化・・・コロナ流行後2年が経過し、資金繰りが再悪化

  ② コロナ支援策の限界・・・しかし、政府には、支援する体力が残っていない

  ③ 中小企業の過剰金融債務・・・能力以上に抱えた債務が返済期を迎える

  ④ コロナ終息後の不況・・・デフォルト増加など、確実に経営環境は悪化

これらが背景として考えられますので、以下を目的とした政策として実施されるのだと思われます。

  『中小企業に対する支援』
  『中小企業の事業再生』
  『中小企業の倒産回避』
  『債権者金融機関への支援』

このうち①~③までは当り前の目的になるでしょうが、④に注目していただきたいと思います。

施策を読み込むにつれ、浮かび上がってきたのがこの『債権者金融機関への支援』というキーワードなのです。

これを頭に入れて、施策の内容を大まかにまとめると

  『債務者に関する透明性確保』
  『債権者主導による事業再生』
  『債務の減免のための条件設定』

この3点が、施策の中でポイントとなっていることが判るのですが、そうすると、債権者が少しでも多く債権回収をするため(損をしないため・・・)に作られた様にしか思えません。

たしかに、以前から噂されていたように、『債務の減免』が施策の主要テーマとなって、具体的に触れられてもいます。

しかし、その実効性については、今までのガイドラインの活用からも判るように、用意されただけでほとんど活用されない可能性もありますから、実際に動き出さないと何とも言えません。

私が敬愛する専門家などは、債務者にメリットはほとんどなく、この施策で債務の減免ほしてもらうぐらいなら、破産を選択した方が良いと明確に主張されています。

まぁ、債務の減免の可能性については、しばらく様子を見るしかないのでしょう。

では、これらの施策が活用開始されると、どの様になるかと予測すると

  『不良債権抑制と債権回収確保』
  『倒産の抑制』
  『M&Aの増加』
  『専門家の業務確保』

これらのことが予測されるのですが、 『M&Aの増加』については、施策を実行するにはスポンサーの活用が不可欠になるような内容になっているからです。

また、第三者支援専門家など、弁護士をはじめとした外部の専門家の活用が謳われていますので、必然的に『専門家の業務確保』が図られることになると思います。

経済の活性化という面にも、十分に配慮した施策だともいえるのかもしれません。

次に、もしも、これらの施策通りに事業再生に取り組むと、どの様になるかシミュレーションしてみましょう。

金融機関や専門家等が積極的関与してきますので、専門家が主体的に主導して事業再生に取り組み、中小企業としては対応が楽になるかもしれません。

しかし、経営者の意向が反映されにくくなくなるのも事実でしょう。

様々な情報提供などで透明性の確保を要求されますので、結果的に、残債務の減免の可能性があることになります。

しかし、債務者や保証人に関する、全ての資産が知られることにもなってしまいます。

事業の維持や継続については、債務の減免やスポンサーを活用できれば、その可能性は高くなります。

結果として、従業員の雇用や取引先の業務を確保できるようになるかもしれませんが、従業員の雇用を保証する根拠はどこにもありません。

清算価値保障(破産するより多く弁済できる・・・)の確保により、金融機関等の債権者により多くの弁済が可能になります。

しかし、保証人などの資産は、ほぼ全て弁済に充当され、丸裸になってしまうのです。

この様に、具体的に内容を精査してみると、欠陥が多く、偏ったバランスの悪い施策だといえるのではないでしょうか。

施策の問題点として具体的に挙げてみれば

  『従業員など社会的弱者への配慮がない』
  『スポンサーへの具体的要請事項がない』
  『債務の減免と債権者保護ありきの施策』
  『債務者・保証人に、取組メリットがない』
  『事業再生のガイドラインになっていない』

ということになってしまいます。

どうやら、この施策は、債務者である中小企業ではなく、債権者である金融機関を守ることを目的に、以下の2つの観点から制度化されたようなのです。

  ① 想像を絶する景気悪化・経営環境の悪化による倒産増加

  ② 債務者の、債権者を無視した任意整理増加

これらに対応すべく用意された施策といえるでしょうから、債務者である中小企業としては、簡単に取り組むべきでないといえます。

ただ、債権者金融機関等から取り組みの要請があった場合、無下に断るわけにはいきませんので、次の観点から考慮をしてみてください。

 今、優先したいものは、
   従業員など社会的弱者の生活か・・・△
   金融機関への配慮か・・・◎
   それとも、経営者の人生か・・・×

 経営者の責任として
   経営をこのまま継続したいのか・・・×
   事業を維持できればいいのか・・・◎
   会社も事業も整理していいのか・・・△

 今後の経営者の人生は
   経営継続で、経営者として・・・×
   事業を譲渡し、雇用されるのか・・・◎
   引退か・・・〇

考慮した結果、◎もしくは〇ばかりであれば、施策の活用をされても良いと思います。

しかし、×があるならば、施策の活用は避けて、任意での対応をされるべきではないでしょうか。

いずれにしても、最善と思われ方向で取り組むようにしてください。

ただ、経営危機打開学としては、経営者の今後の安定的な生活確保を最優先の目的としているため、今回の施策を活用する選択はないといえます・・・。


逆に、『債務者の、債権者を無視した任意整理増加・・・』を、債権者金融機関等が恐れているための施策であるならば、この点を突くことでよい結果が得られるのではないでしょうか。

そうなると、債権者は棚上げして、事後報告とする『任意のM&A』の取組みは面白いでしょう。

そして、番頭さんが独立したような『任意の第2会社』は、もっとも効果が期待できるのかもしれません。

中小企業の事業再生は、今後、一気に変化してしまう可能性があります・・・。

 

 

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