債務免除しても・・・


 

以前より噂になっていた『債務の減免』が、いよいよ具体化をしてきました。

これだけ景気が停滞した後の、コロナウイルス終息後の景気回復などを考えれば、劇薬ともいえる手段が必要なのは間違いありません。

そして、その劇薬ともいえる有効な手段が『債務の減免』であり、ようやく施策として、具体性を持って発表をされたのです。

これで、中小事業者の再生も可能になると思っていたのですが、施策の中身を理解していくと、どうやら、そんな簡単な話ではなさそうなのです。

 

 

政府等は、3月以降、中小事業者向けのコロナ対策に関する施策を、立て続けに発表しました。

  『中小企業活性化パッケージ』
  『廃業時における「経営者保証に関するガイドライン」の基本的考え方』
  『中小企業の事業再生に関するガイドライン』

コロナウイルス終息後の景気対策として、3月冒頭に、正しく立て続けに施策として発表し、政府の本気度が感じられました。

『中小企業活性化パッケージ』・・・では、中小企業の事業継続を支援するために、コロナ資金繰り支援の継続と収益力改善・事業再生・再チャレンジの促進等に係る施策が紹介をされています。

『廃業時における「経営者保証に関するガイドライン」の基本的考え方』・・・は、平成26年に運用開始された経営者保証に関するガイドラインについて、変更を加えるのではなく、活用の観点から対応を明記した内容になっています。

特に、保証に関する債務の整理にウエイトをおいて、留意すべき点を中心に手続きを明確にしています。

『中小企業の事業再生に関するガイドライン』・・・は、4月15日から運用開始をする、新たなガイドラインになります。

題名の如く、コロナウイルス後における中小企業の、事業再生に向けた取組みを、指針 (ガイドライン)としてまとめてあります。

今まで、中小企業の、整理に関するガイドラインとして『私的整理に関するガイドライン』はありましたが、再生に関してでは初めてのガイドラインとなります。

これら3つの施策において、中小企業の事業再生に関する取り組みが具体的になったといえます。

特に、『中小企業の事業再生に関するガイドライン』においては、『債務の減免 (債権放棄)』を含めた事業再生の指針がまとめられており、今後、一気に事業再生が動き出す可能性さえあります。

今後の再生現場においては、不可欠な資料となるでしょうから、しっかりと読み込んでみることにしました。

 

読み込んでみて、最初に感じたことは、何のために・・・そして、誰のために作られた資料なのかということです。

全編において、債権者である金融機関と、債務者である中小企業との関係について、両者の健全な関係を前提に指針がまとめられています。

再生するにおいても、廃業するにおいても、債務者は債権者に支援を求めて、協力を仰ぎながら手続きを進めなさいという内容です。

債務の減免(債権放棄)についても、積極的に取り上げて、具体的に触れられていますが、そのための条件にもウエイトが置かれています。

債務の減免をするには・・・

債権者と、適時適切な対応を取って信頼関係を構築する・・・

常に経営状況を債権者に開示し説明して透明性を確保する・・・

法人と経営者の公私を明確に区分し分離する・・・

有事を自覚した場合は、金融機関や実務専門家に相談し助言を得る・・・

などといった対応が求められ、実体として、債権者主導の体制にしようとしています。

債務者のすべての資産をオープンにして開示することが前提となっているのです。

何か、当たり前のことを求められている様に錯覚するかもしれませんが、これが事業再生手続きであることを考えると、取組の方向性が完全に間違っているといえます。

本来、中小企業の事業再生を推し進めるための指針であるはずなのに、結果的に、債権者金融機関の権利(債権)を保護するためのガイドラインになってしまっているのです。

しかも、再生手続きに入ったことで、経営者責任を明確にすることになっていますし、債務の減免などが絡むと株主責任まで追及されるのです。

さらに、保証債務を抱える保証人さんの資産にまでも厳しく言及をしています。

債務の減免をしてほしいなら、保証人の資産も全て差し出せ・・・と。

要は、主債務者や保証債務者を含め、所有する資産は全て差し出せて、債権者の回収を優先させろということになります。

主債務者や保証債務者が丸裸になれば、そのうえで、無担保で残った債務は減免してやろうということなのです。

判り易く表現すれば、債権者にだけ都合の良い指針・ガイドラインだということになります。

債務の減免が不可欠になるほどの経営危機に陥った債務者が、手元に残っている資産など微々たるもので、まともに弁済に充当など出来るはずはありません。

指針の内容は、債務者に対して・・・

  債権者に配慮して、丸裸になって、債務の免除をしてもらうのか・・・

  債務の免除など受けずに、守るべきものを守って自らの力で切り抜けるか・・・

という、二者択一を迫っていることになります。

現状での選択肢は、全てを投げ打って再生を目指すか、私的整理で社会的弱者を守るか、破産するか、夜逃げをするか、それとも・・・という限られた状況なのです。

この状況で、債権者に無意味な配慮をして、その結果として、債務減免をしてもらっても意味がありません。

債務の減免とは、債務者に一定の権利を残してこそ意味があります。

事業再生における債務の減免ならば、事業の継続は当然のこと、経営権の継続を前提としたものでなければ意味がないのです。

正直、もっと活用可能な施策が用意されると思っていましたが、極端に債権者寄りでバランスの悪い内容で驚きました。

建前的に、破産回避や再チャレンジなどと謳っていますが、こんな言葉に騙されて丸裸になる債務者も少ないでしょう。

いったい、こんな施策を誰が作ったのかと、中小企業の事業再生等に関する研究会名簿を見てみると、案の定、債権者である金融関係機関の幹部や、机上の空論を振り回して現場を知らない学者さん達が大半です。

メンバーに弁護士さんはおられますが、債務者側の委員は誰もおられませんので、『なるほどね・・・』と納得するしかありません。

施策に期待していた分、ショックも大きいといえますが、この施策を債務者として活用する方法は存在します。

施策を有効に活用しようとするならば、事前の対応を、時間を掛けて具体化するしかありません。

それは、何か・・・?

コロナ終息後の環境で、債権者である金融機関等が怖れ、この施策で予防しようとしているのは、債務者が自らの判断で事業や資産を維持しようという動きになります。

そうすると、それは第二会社ということになるのです。

あらためて、私的な第2会社の活用が有効な環境だと認識し、対応を見直す必要があるといえます。

  

 

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