ワクチン接種が始まり、いよいよコロナウイルスも収束が見えてきました。
これで、世の中は落ち着き、経済も動き出して元に戻り、商売も回復をしていくのだろうと思います。
しかし、経済が戻ると、コロナ禍での中小事業者の支援も終わり、負担すべきものを負わなければなりません。
まだ売り上げも回復せず、先の見えない状況で、コロナ借り入れの弁済や、税や社保の猶予分の支払いを考えると、不安で食事が喉を通りません・・・。
コロナウイルスが経済に与えた影響は、それこそ未曽有の規模で計り知れないものだといえます。
当初、日本政府も潤沢に資金を供給したり、租税公課などを猶予して中小事業者の資金繰りを支援してきましたが、いつまでも国の財政がもつはずがありません。
徐々に政府の施策は、自助に重点を置いた対策に変化し、自ら生き残ることを求め始めました。
そのような環境で、ワクチン接種などでコロナウイルス禍が収まると、過剰なコロナ融資の弁済や猶予された租税公課の倍付支払いが開始されることになり、中小事業者は必然的に更なる経営悪化に陥り、倒産が一気に増加することになるでしょう。
政府は、中小事業者を救済すべく、効果的な施策を実施しなければなりませんが、既に、コロナ環境で考えられる限りの施策は実施済みなのです。
この状況で、小手先の政策などで効果を期待できるはずもありません。
残された手段はただ1つ、債権放棄を組み込んだ施策しかありません。
事業再生は、地道な対応が必要な困難な作業であることは間違いなく、特効薬はないといわれてきました。
しかし、劇的に状況を改善できる『特効薬』は存在します。
その特効薬が、『債権放棄』になります。
債権放棄とは、債権者が債務者に対し債務を免除する意思を表示したときに、債権が消滅することになります。
具体的には、債務者の意思にかかわらず、債権者の意思のみで債務を消滅させる債権者の単独行為を債権放棄ということです。
一般的には「債権放棄」と呼ばれる事が多いようですが、債務者の立場からすれば債務免除ということです。
債権放棄をされると、債務者は借入金などの債務を免除され、弁済する義務が消失しますから、事業再生の現場では様々な効果を期待できるでしょう。
経営危機を打開する特効薬である『債権放棄』について、コロナ禍後の中小事業者救済の手段として本気で制度化するしかないのではないでしょうか。
コロナ禍において、金融の常識は極端に変化してしまいました。
コロナ騒動の収束とともに、事業再生や経営危機打開の手法も、今までの常識では測れないほど変化していくと思います。
バブル崩壊以降の事業再生に関する制度を見ていると、以下のキーワードにより、今後の事業再生の変化が見えてくるように思います。
1. 欧米化の与信
債権者である金融機関の姿勢は、ここ数年で大きく変化してきました。
その顕著なものが、連帯保証人についての対応です。
債権回収のために、さんざんに連帯保証人制度を活用してきた金融機関も、世論の批判が激しくなるにつれ連帯保証人制度を見直すようになってきました。
今後は、人的保証である保証人について力点を置かなくなり、物的担保である不動産担保などから債権回収を図ろうという流れになってくるのだと思います。
担保さえ処分すれば、残債は請求しないというノンリコースローンにまでいけば理想ですが、そこまでは難しいのではないでしょうか。
2. M&Aによる債権放棄
今後、M&Aによる債権放棄を活用した手法が、事業再生や経営危機打開の主要な手法になってくると思われます。
M&Aによる清算価値保証により、金融機関は債権放棄や事業の譲渡を容認しやすくなりますので、総合的なシステムが構築できれば、取り組み事例は飛躍的に増加すると思われます。
ただ、この流れを理解したスポンサーを探すことや、関与する経験の豊富な弁護士を見つけるなどが、今後の解決すべき問題として残ります。
将来の事業再生は、建前に惑わされずに、損得を明確にした本音の取組みに変化し、合理的な手法が活用されるようになるのではないでしょうか。
経営改善などにおいては、再生ができるかもしれない計画ではなく、再生を実現する結果に債権者は注力を置くようになるでしょう。
また、現状の経営形態にこだわらず、債権回収と収益性を優先した別の経営形態での再生を優先するようになると思います。
返済原資を持たないような債務者に対して、手間暇かけて債権回収をするといったような無駄なことは避け、制度を活用して事前に資産を調べて効果的に回収を図る・・・そんなメリハリのある取り組みに変化していくのだろうと思います。
制度の変化は、前向きに加速していくでしょうから、経営者は常にアンテナ張り巡らせて最新の情報を得るとともに、ポジティブに取り組む姿勢が求められるでしょう。
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