資金繰りは、誰が担当する・・・?


資金繰りについて、誰を担当者にすべきかとお問い合わせをいただきました。

資金繰り担当者の総務部長が定年により退社されるのですが、その後の担当が決められません。

年商7億円,従業員は45名ほどの会社で、次の総務部長は交渉能力はありますが経理については詳しくはなく、経理の担当者は若くて交渉能力は未知数で未熟ということで、安心して任せられる方がいないと悩んでおられます。

場合によれば、メイン銀行からOBを迎えて資金繰りを担当してもおうかとも考えておられますが、厳しい経営環境の中で、今後の資金繰りに不安を抱いておられるのです。

 

一時的にせよ、社外もしくは腰掛け的担当者に、資金繰りを任せるのは問題があると思います。

資金繰りは、経営の根幹をなすもので、絶対に失敗の許されない作業です。

健全な経営時においても、経営トップが、常に把握し関与をすべきものでもあります。

そんな重要な作業を、責任のない方にお任せするというのは、自殺行為だと表現しても過言ではないと思います。

よく、税理士さんなどの専門家が、資金繰り表を作成されている事例を見かけますが、資金繰りという面においての効果には疑問があります。

税理士さんは数字のプロではありますが、直接に経営にタッチされている訳ではなく、具体的な売り上げ動向を把握されている訳でもありませんから、実態を反映しない作られた資金繰り表になってしまう可能性が高いのです。

また、メインバンクの元行員が、銀行を退職後に経理の責任者になられている事例を見かけることも少なくありません。

彼らは資金のプロですから、資金繰りなど簡単な作業になりますし、メインバンクとの絆も太くなり、良い選択の様に思われます。

しかし、この様な事例の多くの場合、資金繰り担当者の目的が違う方向に進む懸念があります。

正しい経営状況を銀行に報告するという任務があるでしょうし、いざという時にはスムーズに与信保全や債権回収に取り掛かれるためというのもあるでしょう。

また、資金繰りの確保が難しくなり、生きるか死ぬかという本当に資金繰りが重要な局面になると、彼らの無責任な本性を見せつけらて全く役に立たないことに気付かされるのではないでしょうか。

 

そもそも、中小零細企業における資金繰りというものは、経営トップが主体的に関与すべきものだと思います。

どの様な経営状況にあろうとも、資金繰りの状況について、常に経営者は頭に入れておく必要があり、その作成についても、経営者もしくは信頼できる従業員が主体的に対応し、常に経営者が関与するべきなのです。

資金繰りは、いつでもどこでも確認し、どうにでも社内で処理できるというのが、大前提になろうかと思います。

現在、担当できる適任者が社内におられないのであれば、分業を図るのも方法ですし、今後のために育成の努力をする必要もあるでしょう。

同時に、フレキシブルに対応できる様に、資金繰りをシステム化してルールを明確にしておくことができれば、今後の資金繰りの負担は大きく削減できる様に思います。

お問い合わせの事例の場合、経理の担当者,総務の部長,経営者の3者が、段階的に対応する様にされてはいかがかと思います。

例えば、3つの段階で対応が出来るようにし、第1ステージで経理の担当者が資金繰り表を作成され、第2ステージでは交渉力のある総務部長が資金繰りに参加され、第3ステージでは経営者が結論を導くという流れになるのでしょうか。

第1ステージは、健全企業の資金繰りレベルと考えてみましょう。

単純に、入金と支出を計上して、資金不足が起こらないように資金繰り表を作成するという作業になります。

経理の担当者は、当然に経理面のスキルがあるでしょうから、出来れば今後6カ月間についての、具体的な入金予測と、原価・経費などの支出について、出来るだけ正確な数値を入れて、資金繰り表を作成してください。

作成された結果については、総務部長が常に検証をすることがポイントになります。

第2ステージは、債務者区分でいうところの『要注意先』もしくは『要管理先』といった、資金繰りに不安がある企業レベルだと捉えてください。

入金と支出を計上すると、資金が不足するという状況になるでしょうから、様々な資金繰り対策が必要になります。

入金を早めたり、支払いを遅らせたり、借入をしたりと、ある程度の技術が必用な資金繰りになりますし、金融機関との交渉能力も必要になると思います。

したがって、経理の担当者が作成された資金繰り表に則り、その不足分について総務部長が補完をしていくという流れになります。

取引金融機関との新規融資などの交渉においては、総務部長が主体となるでしょうが任せきるのではなく、かならず経営者も関与するようにしてください。

第3ステージについては、資金不足が顕在化し、簡単に資金繰りが確保できない状況だと捉えてください。

当然に、資金繰り確保の高等スキルが必要な状況になります。

資産を資金化したり、支払条件の変更をしたりと、会社の信用に影響を及ぼすような対応が必要になり、また、金融機関との新規融資などの交渉も極めて難しくなるでしょう。

したがって、経営トップが具体的に関与し、主導権をもって判断や交渉を実施することが求められます。

 

中小零細企業でも、小さな会社であれば、これらの作業を全て経営者がお一人で担当し処理されるというのが一般的です。

しかし、事業規模が大きくなると、経営者だけでは難しくなりますから、この様に段階的に分業をする流れで対応する方が合理的ではないでしょうか。

なお、資金繰り表については、最低でも6ヶ月間分を目指して作成してみてください。

 

 

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