借金と時効と・・・


逃げずに、まっ正面から借金に向き合いなさい・・・

時効の援用など、できるはずもなく考えるだけ無駄・・・

モラルに欠けないような対応をしなさい・・・などと、専門家は主張されます。

学校では、この様に習った記憶がありますが、実社会でも、この様な対応で合理性が確保できるのでしょうか。

 

暇つぶしに、大手のポータルサイトを覗いていると、『借金の時効は何年で成立するのか・・・』というコピーが目に飛び込んできました。

当然に、クリックしてページを開き、時効を活用するための、どんな知識を紹介してくれるのかとドキドキしながら読み始めます。

最初は、時効についての概略説明があり、いよいよ本題に入ろうかというところになり、『時効は簡単に成立しない』という題目です。

なるほど、簡単に成立しない時効を、如何に成立させるのかについて方法を紹介してくれるのかと思い、読み進めます。

ところが、続く内容は以下の通りです。

  ◇ モラルに欠けるような時効の使い方をしてはいけない・・・

  ◇ 借金から逃げきろうと考えるのは、その間は住民票などが移せなくなり、生活は不便になり何の得もない・・・

  ◇ 債権回収のプロが、債権を放置することなどなく、時効の援用が出来るなど考えにくい・・・

  ◇ いばらの道を歩くのではなく、借金と向き合い解決方法を探った方が得策・・・

この様な、どこでもよく見かける内容が紹介され、結局は時効を否定して締めくくられていました。

『借金の時効は何年で成立するのか・・・』というテーマからすれば、詐欺の様な終わり方です。

この文章は、時効を援用されると困る金融機関などの債権者側が書いたか、時効について具体的な知識の無い方が書かれたものでしょう。

時効についての捉え方も、現場の実態についても、間違っておられる様に思います。

 

モラルに欠けるような時効の使い方をしてはいけない・・・とありますが、時効を活用することはモラルに反するのでしょうか?

時効は、法律で認められた権利です。

その法律で認められた権利を活用することが、もしもモラルに反するというのであれば、我々は法律を遵守出来なくなってしまいます。

借金などの債権債務も、法律によりしっかりと規定されてルール付けされているのですから、法律の範疇で時効を活用するのに何の問題もありません。

この文章は、刑事事件を起こして逃げ回る犯罪者を想定して書かれたのだろうと思いますが、借金等の債権債務処理は民事であり、全く状況は異なるのです。

 

借金から逃げきろうと考えるのは、その間は住民票などが移せなくなり、生活は不便になり何の得もない・・・という表現には驚きました。

時効の援用を目指すのに、住民票が何の関係があるのでしょうか?

住民票を移そうが移すまいが、時効には何の影響もありません。

したがって、この作業により生活が不便になることなどありえないでしょう。

何よりも、借金から逃げきろうと考えて時効を活用するのではなく、法律に認められた国民の権利として時効を活用しようとするだけなのです。

 

債権回収のプロが、債権を放置することなどなく、時効の援用が出来るなど考えにくい・・・たしかに、この様に考えられる方は少なくありません。

時効の知識を持たれた専門家でも、この様に表現される方は多いのですが、実践の現場おいては、時効期間が完成して、いつでも援用できる状態になっている債権債務は驚くほど多いですし、実際に時効の援用されている債権債務も少なくありません。

金融機関などの債権者は債権回収のプロですから、債権の回収を放置することは考えにくいかもしれません。

しかし、回収の出来る目途がない債権について、いつまでも費用と手間と時間をかけて取り組むことはありません。

最終債権者は、どこかで諦めて放置することになり、それにより時効期間が完成して時効の援用が可能となるのです。

この結論に至るまで、5年掛かるのか、10年掛かるのか、15年掛かるのか、それ以上掛かるのかは判りません。

債務者としての環境整備や、債権者の考え方次第で変わってくるでしょうが、最終的には、時効の援用は可能になるということなのです。

この流れと考え方が、時効を有効に活用するポイントになります。

 

いばらの道を歩くのではなく、借金と向き合い解決方法を探った方が得策・・・と言われますが、本当に解決できるのでしょうか。

時効を考えるというのは、既に借金を返せないという状況にあるわけです。

そんな状況において、債権回収のプロである金融機関などの債権者は、当然に、あらゆる手段を講じて債権回収を図ろうとしてきます。

債権債務処理や時効などの知識の乏しい債務者が、そんな債権回収のプロと正面から向き合い、本当に解決など図れるのでしょうか。

腹をすかしたオオカミの前の小ヒツジの様なものですから、当たり前の答えしかありません。

何よりも、借金と真正面から向き合って処理を図った方が、その後に、いばらの道を歩んでおられる様に、私は経験上において思います。

 

この記事の作者は、借金などの民事における時効について、理屈や理論は知っておられても、実践の知識は少ないのかもしれません。

机上の空論という内容であり、実践の現場においては、なかなか通用しないと思います。

大手のポータルサイトだからと、このような時効の記事を信じて対応してしまうと、後々、後悔することになるのではないでしょうか。

 

 

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