建前の、経営者保証に関するガイドライン・・・


 

貸す方と、借りる方・・・、健全な状況であれば、当然に良いお付き合いが出来て、問題が発生しても、双方が納得出来る答えを見つけることができるでしょう。

しかし、健全な状況でなくなると、その関係もギクシャクし始めて、違う方向を見るようになってしまいます。

貸す方と、借りる方、そもそもは真逆の立場を容認した関係ですから、違う方向を見始めると、お互いを理解することが出来なくなり、結果として、収拾のつかない亀裂が入ることになってしまうでしょう。

メインであるメガバンクが、突然に仮差押をしてきました。

ご相談者から話を聞かされても、相手がメガバンクですから、にわかには信じられませんでした。

社会的信用を優先する大手銀行は、法的手続きの着手をチラつかせて脅してくることはあっても、現実に仮差押などの手続きをしてくることは少ないのです。

よほど悪質な対応をしているなど、特殊な事情がない限り、債務者を破綻に追い込む可能性の高い仮差押などは、出来るだけ回避しようというのが現実だと思います。

具体的にご相談者のお話を伺ってみると、やはり納得出来る特殊な事情が存在をしていました。

ご相談者は、経営状況が厳しくなって、3年ほど前から、メガバンクからの借入について、元本返済の100%棚上げをする返済条件の変更をされています。

更新の度に、メガバンクは経営改善状況を確認してきますが、ほとんど改善はせずに明らかな債務超過状況にまで落ち込んでしまったのが実態です。

当然に、元本返済は出来ず、利息の支払いだけでも精一杯の状況が続いているのですが、過去2回の返済猶予の更新はスムーズに対応をしてくれました。

ところが、3回目の更新の交渉において、メガバンクは自宅を担保に入れることを要求してきたのです。

自宅は、僅かな他行の住宅ローンが残っているだけで、担保としては十分な価値があり、債権回収に不安を覚えたメガバンクが担保として要求して何ら不思議ではありません。

むしろ、今まで担保にしていなかったのが不思議だと言えるのですが、このメガバンクの要求をご相談者は拒否されました。

生活の基本である自宅を、万が一の状況おいて喪失する可能性のある担保になどには絶対にしない、担保にするぐらいならば事業を止めた方がましだとまで言われたのです。

その結果として、何度かの交渉で、担保として要求し続けて拒否されたメガバンクが、とうとう自宅の仮差押をしたということになります。

 

こういう分野に明るい方なら、こういう流れならば仕方がないと思われるでしょうが、ご相談者は大事な自宅を仮差押されたことに猛反発をされました。

その根拠としては、経営者保証に関するガイドラインです。

具体的には、経営者保証に関するガイドラインに規定されている『経営者でも保証人にならない』,『華美でない自宅は残せる』というキーワードで、メガバンクの本部と金融庁に確認(クレーム)の問い合わせをされました。

メガバンクは、『法律的に全く問題はない』という答えで、全く相手にもされません。

金融庁は、『連帯保証人問題を処理しようという流れなのに、時代に逆行した対応ですね。』という担当者の無責任な返答があっただけです。

これらの対応に、ご相談者は納得がいかず、本当に仕事を止めてしまいそうな勢いなのですが、根本的な誤解があるようなのです。

中小零細企業の経営者は、運転資金借入の担保として自宅を提供するのは、何ら不思議ではない行為です。

連帯保証人については、非文化的な制度だとして問題視され、解決する方向に動いていますが、借入時に不動産等を担保にすることについては、先進国では当たり前の共通した手続きだといえます。

住宅ローンを組んだ時は必ず担保として提供するのですから、もし、運転資金借入時に、どうしても自宅を担保に入れるのが嫌であれば、借入をしないか経営を止めるという答えになってしまいます。

 

また、経営者保証に関するガイドラインを根拠にするのも問題があります。

経営者保証に関するガイドラインは、あくまでも任意の指針であり、法律ではありません。

したがって、債権者が必ず従わなければならないものではありません。

しかも、その適用には、様々な諸条件が設定されていますし、何よりも経済的合理性が前提となる制度なのです。

『華美でない自宅は残せる』というキーワードを、経済的合理性の面から検討するとすれば、清算配当率との比較という事になります。

例えば、このまま愚図愚図して最後に破産をするしかなくなった時よりも、早い段階で、破産もしくは整理を決断することにより、債権者金融機関に対して自宅の価値以上の配当を増加できる様な場合が、経済的合理性があるという事になるのです。

華美でない自宅を残すことにより、より多くの清算配当が受けれるのであれば、債権者は『得』をすることになりますから経済的合理性があるのですが、現実的には、こんな事例はなかなかありません。

しかも、自宅を担保に取っているのであれば、清算配当率において、経済的合理性を実現するのはほぼ不可能でしょう。

経営者保証に関するガイドラインというものは、事業承継における連帯保証人の承継や、日本政策金融公庫等の融資における経営者保証の不要については、一定の効果をあげていますが、それ以外においてはほとんど役に立っていません。

特に、破産や整理を前提とした債務処理については、ほとんど機能していません。

金融機関側の建前として存在しているだけで、結局のところ、本当に必要とする債務者にとっては役に立っていない制度なのです。

 

今回は、自宅に担保をつけないというのは間違った選択だと思います。

事前に、無剰余にしておけば良かったのですが、価値のある状態で存在する連帯保証人・経営者の資産ですから、不安を覚えた金融機関が債権回収の手段として活用しようというのは当たり前でしょう。

しかも、拒否した結果、『仮差押』の存在する不動産登記簿謄本になってしまったのですから、不動産価値も低下してしまった事になります。

ここは、大人の対応として、メガバンクと冷静に話し合い、担保にすることを前提に協力を仰ぎ、事業の再生を目指して経営改善に取組むというのが本筋でしょう。

 

 

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