『 子供の学資保険を取り崩してでも、未払いの支払をしなければ・・・』
売上高2億円程の中小企業で、経理を担当されている社長夫人が発せられた言葉です。
経営者が、よく勘違いをされている代表的な事例になりますが、何故、支払をするために、経営者の個人資産を取り崩す必要があるのでしょうか。
既に、経営は破綻状況にあるといえますが、経営者自身が個人保証でもされているのでしょうか。
まだまだ、再生の見込みのある経営状況で、経営者が掛けている子供の学資保険を解約して、その資金を資金繰りに流用しようというのなら、まだ理解出来ないこともありません。
しかし、再生の見込みのない実質破綻状況において、個人保証もしていない債務に対して、経営者が子供の学資保険を解約してまで個人的に責任をとるというのは大きな勘違いだと思います。
たしかに、仕入先等に対して、債務者企業の経営者としての『道義的責任』を否定することはできません。
しかし、保証人でなければ、経営者であるといえども、人格が違うのですから、個人として法的責任を負う必要などはないのです。
経営危機時における、中小企業経営者の責任の取り方を考えるにおいて、整理してしっかり認識をしておきたい留意事項が2つあります。
ひとつは、債務者企業の経営者と、経営者個人との人格の違いであり、もう一つは、法的な責任と道義的な責任を区別するということです。
まず、人格の違いについてですが、これはよく混同されて間違った認識をされているようです。
中小企業の経営者とは、受け皿組織である中小企業という法人において、具体的に権限を持って運営する自然人のことです。
法人は、自然人が運営して動かさないと機能しませんから、代表取締役や取締役,監査役という役職において、法人の運営について権限と責任を持ったものが経営者だということになるのです。
したがって、たとえ代表取締役といえども、自然人としては、法人とは人格が違うということになります。
例えば、債務者として金融機関から借入をしている会社が、返済が難しくなって期限の利益の喪失をして不良債権になったとしましょう。
その不良債権について、代表取締役が保証人であれば、当然に保証債務についての法的責任が存在することになります。
しかし、代表取締役が保証人でなければ、債権者である金融機関に対して弁済出来ないという道義的な責任はあっても、法的責任を追及されることなどはないのです。
これは、判っているようで、勘違いし易い内容であり、間違って解釈されている経営者は少なくありません。
また、この勘違いし易い内容を逆手にとって、債権者である金融機関などは『経営者責任』という表現を使い、保証人でもない経営者の資産で弁済をさせようとします。
経営者の年老いた母親の定期預金を取り崩させて、滞っている元本返済に充当させる事例など珍しくもありませんが、母親自身が経営者であろうとも保証人でなければ、法的には自分の資産で弁済する必要などはありません。
保証人ではない経営者が、背負わなければならないものは法的責任ではなく、道義的な責任なのです。
二つ目の留意事項として、法的な責任と道義的な責任を区別するということについては、今までの説明から、既にご理解をいただけたのではないでしょうか。
代表取締役や取締役として、法人の運営について権限と責任を与えられた以上、支払が出来なくなったり、破綻してしまったりすれば、当然に責任をとらなければなりませんが、それは道義的な責任になります。
仕入先への支払が出来なくなれば、経営者として道義的な責任は存在しますから、説明や謝罪を含め出来うる限りの善処をする責任があるのは当然です。
しかし、その責任は道義的な責任であり、法的責任に直接結び付くものではありません。
金融機関や商取引先など、税金や社会保険を除く全ての債権者に対して、保証人でなければ、顕著な過失がない限りは法的な責任を負う必要など無いということなのです。
人格の違いと責任の区別は、経営危機場面では必ず理解しておきたい内容です。
これを間違えれば、ハイエナと化した金融機関などの債権者に、問答無用の対応をされかねません。
しっかりと理解し、根拠を持って対応出来るようになっておいてください。
なお、税金や社会保険については、第2次納税義務者という制度があり、債務者本人や保証人ではなくても責任を負わなければならないことがあります。 この制度については、機会を見つけてご紹介をしたいと思います。
詳しい内容は、ホームページをご覧ください,
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