リスケでも新規融資・・・


 

『リスケジュール中でも、新規融資は不可能ではありません・・・』と言いえば、金融に詳しい経営者には馬鹿にされるかもしれません。

約束通りに返済が出来ない債務者に、あの金融機関が、新たな融資などするはずがないといわれるでしょうし、冷静に考えればその通りなのです。

しかし、周りを見渡せば、リスケジュールをしているはずなのに、追加融資を受けられた事業者があるのです。

このコロナ禍においては、リスケジュール中事業者でも、当たり前の様にコロナ関連融資をしてもらっていますから、どうも合点がいきません・・・。

 

リスケジュール(借入金返済条件の変更)をすると、金融機関との関係はどの様になって、新たな借入の可能性はどうなるのでしょうか。

昔 (平成21年の中小企業金融円滑化法の施行以前) は、リスケジュールをすると金融事故扱いをされて、金融機関との関係は悪くなると思われていました。

現実的に、リスケジュールに簡単に取り組んでくれるものでもなく、新規の融資など取り合ってもくれないのが一般的でしたし、金利も挙げられて当たり前だったのです。

前回のブログでご紹介しました様に、要管理先債権に分類をされ、債権回収に目を光らされるようになり、健全な債権として扱われなくなります。

したがって、リスケジュールをすると、新たな借入はできないというのが、債務者側の共通認識だろうと思います。

ところが、月末には資金破綻を引き起こすかもしれないほどに資金繰りの厳しい事業者が、このコロナウイルスの環境においては、リスケジュール中なのに新規の融資を受けている事例は珍しくありません。

弊社のご相談者の中では、コロナウイルス騒動になって以降、コロナ融資により、資金繰りが改善したという方がほとんどだという皮肉な現実さえあります。

これは、政策として、コロナ融資については、リスケジュール中でも新規融資が可能とされているからであり、イレギュラーな事例だといえるのでしょう。

では、通常な環境においては、リスケジュールをすると新規借入ができなくなるのかといえば、実はそうではありません。

制度やルールに則っても、リスケジュールをしたから新規融資ができないものではなく、一定の条件の下では新規融資の可能性があるのです。

 

前回のブログでご紹介したように、債務者は財務状況などにより債務者区分をされ、金融機関は応分の貸倒引当金を積まなければなりません。

債務者区分が下がると、債権に対する貸倒引当率が上がるために、金融機関も貸出先の債務者区分を下げたくないのが本音だといえます。

そして、債務者区分における要管理先の対象は、要注意先の債務者のうち、当該債務者の債権の全部または一部が3ヶ月以上延滞債権及び貸出条件緩和債権である債務者になります。

そして、要管理先以下に区分された会社は、金融機関から新規融資を受けることが困難になるという捉え方になっているのです。

ここで注意していただきたいのは、普段はあまり耳にしない『貸出条件緩和債権』という言葉であり、銀行法施行規則による定義づけは、まさしくリスケジュールに該当してしまっています。

ところが、金融庁の他の監督指針では、一定の条件により貸出条件緩和債権に該当しないというものがあります。

たとえば、債務者のリスクに見合った基準金利が確保されていれば、貸出条件緩和債権には該当しないとされています。

一般的に、リスケジュールを依頼すると、金利のアップを要求されるのはこのためであり、リスクに見合った金利さえ払えば貸出条件緩和債権にしないということになります。

たしかに、リスケジュールを依頼する債務者は、元本返済は当然のこと利子さえ支払うのが厳しい資金繰り状況ですから、信用リスクは大きくなり支払うべき基準金利もアップするという理屈なのです。

これを逆手に取ると、基準金利を確保すれば新規融資は可能になるし、信用リスクを下げて基準金利が下がれば、低い金利でも貸出条件緩和債権にはならないということになります。

 

具体的に貸出条件緩和債権にならないために、金融検査マニュアルにおいては、

 ① 融資先の信用リスクが下がる
 ② 融資先から実抜計画または合実計画が提出される

上記2点により、貸出条件緩和債権にしないことが認められています。

① 融資先の信用リスクが下がる要因として、金融検査マニュアルの例示は、

 A. 貸出金が、担保や代表者等あるいは信用保証協会の保証により、保全されていること

 B. Aに該当しない場合にあっても、代表者等が会社を支援する意思が確認できること

 C. 企業の技術力、販売力や成長性等を総合勘案した結果、今後の事業の継続性や収益性の向上に懸念がないと認められること  ・・・・等が規定されています。

② 『融資先から実抜計画または合実計画が提出される』について、「中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針」では、

「実現可能性の高い抜本的な経営再建計画に沿った金融支援の実施により経営再建が開始されている場合には、当該経営再建計画に基づく貸出金は貸出条件緩和債権には該当しないものと判断して差し支えない」等と規定されています。

実抜計画または合実計画があれば、リスケジュールをしても貸出緩和債権とならないために、金融機関は経営再建計画の提出を要求してくるのです。

ここにいう「実現可能性の高い抜本的な経営再建計画」(=実抜計画)とは、

 ① 概ね3年以内に債務者区分が正常先となること
 ② 関係銀行の同意を得られること
 ③ 売上等の予想数値が厳しめに設定されていること

以上を充足させる計画をいいますが、中小零細企業でこの達成は難しいために、「精緻な経営改善計画等の作成や実現が困難なために、最長1年以内に経営再建計画を策定する見込みがあるときには、最長1年間は貸出条件緩和債権には該当しないものと判断して差し支えない」と、金融検査マニュアルで規定されています。

つまり、中小零細企業は、経営再建計画の策定までに、最長で1年の猶予が与えられるということになるのです。

さらに、中小企業にあっては、合理的かつ実現可能性の高い経営改善計画が策定されている場合には、これを「実現可能性の高い抜本的な経営再建計画」とみなして差し支えないものとされています。

「合理的かつ実現可能性の高い経営改善計画」(=合実計画)とは、

 ①  計画期間が概ね5年以内(中小企業の場合、5年を超え概ね10年以内)であること
 ②  計画期間終了後の債務者区分が正常先となること
 ③ 全ての取引先銀行において、支援を行うことについて文書その他により確認できること

以上を充足させる計画をいいますが、つまりは、中小零細企業は、要件の緩やかな合実計画に従って経営改善に取り組めばよいということになるのです。

 

結論として・・・・

 ①  基準金利をクリアーしている
 ②  実抜計画に則って経営再建に取り組んでいる
 ③  1年以内に実抜計画を策定する見込みがある
 ④ 合実計画に則って経営再建に取り組んでいる

これらの対応により、リスケジュールに取り組んでいても、貸出条件緩和債権にはならず、要管理先に分類はされません。

そして、要注意先に留まることにより、新規融資も可能ということになるのです。

 

 

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