再生を目指しての事業の継続と、事業を整理するための対応は、相反する取り組みになります。
余裕のある経営環境であれば、再生を目指して経営改善しながら事業の維持を図り、万が一に再生ができない場合のことも考えて、整理についても準備しておくというのは可能かもしれません。
しかし、この二つは両極にある手続きであり、本来は、同時に取り組み実行できるような簡単なものではありませんから、このコロナウイルスの厳しい環境において同時に取り組むのはまず不可能だといえるでしょう。
ところが、コロナウイルスで経済が低迷してから約半年、事業の継続と事業を整理のどちらを選ぶべきかと、苦悩し翻弄され続けてきた中小事業者も、そろそろ決断を迫られるタイミングになろうとしているのかもしれません。
事業を再生しようとすれば、時間が必要になります。
再生を目指して経営改善に取り組む期間、資金繰りを確保する必要があるのも当然です。
また、経営改善においては、様々な費用や投資も発生しますから新たな費用も必要になります。
したがって、資金繰りの厳しい環境においての経営改善は様々に負担の大きい作業ですから、このコロナウイルスの環境で再生を目指すというのが、正しい選択であるのかについては疑問なところもあります。
しかし、多くの経営者にとっては、事業を継続するのが当たり前、継続するしかないという考え方がベースであり、それ以外の選択肢など検討の余地もないのかもしれません。
また、事業継続を諦めて、整理をするにしても、破産するわけではありませんから、一定の準備時間が必要になります。
当然に、その間の資金繰りを確保する必要があるでしょうし、配当などのための資金も確保しなければなりません。
整理するにしても費用はかかるものであり、それは僅かな負担ではありませんが、最善の結果を得るには仕方がないのでしょう。
しっかりと、将来的な展開を読んだうえで、冷静な判断の下で、従業員や取引先のこと、そして経営者の今後の人生を考えて、最善であると整理を選ばれたのです。
その判断は、最善の努力間の結果、導き出された決断だったのでしょう。
では、実際にコロナウイルスの環境下において、中小事業者はどの様な決断をしようとされているのでしょうか。
現実には、事業継続をされている方がほとんどだろうと思います。
再生の可能性があるからでもなく、具体的な根拠を持って継続を選択されたわけでもなく、ただ、漫然と事業を継続されている方も少なくはないでしょう。
当然、最低限の経営改善には取り組んでおられるでしょうが、この厳しい環境下で上手くいくかは疑問です。
手を付けるにしても、経営改善の売上増加,粗利益アップ,販管費圧縮という経営改善三要素の中で、販管費の圧縮を図ることしか出来ない環境だと思います。
売上の増加や粗利益のアップは、この環境では不可能だといえますから、経営改善が上手くいく可能性は極めて低いといえるでしょう。
事業者も、このままどうなるのか不安で、何とか対応したいと思っても、どうすればいいのか判らないので、ただ現状のまま事業を維持している方が大半なのではないでしょうか。
それで、事業の維持が順調にいって、良い結果に繋がれば問題はありません。
しかし、この経営環境下では、維持をするために手元資金を枯渇させてしまったり、関係者に不要な負担を掛けてしまったりなど、良い結果を得られずに最悪の事態に直面している事業者も少なくないと思います。
漫然と事業を継続されているのであれば、整理も視野に入れて、根本的に展開を検討してみるタイミングにきているのではないでしょうか。
長期の資金繰り表をベースに、今後の事業収支予測などを参考にして、最善の結果を得るために、具体的に方向性を検討すべきだと思います。
可能性があるのなら再生を目指して事業の維持を図り、資金の枯渇などにより破綻の可能性があるのであれば整理も選択肢として検討をする、事業者はそんな究極の決断を求められている環境になろうとしています。
政府も、不況対策や中小事業者の資金繰り確保のための政策をほぼ出し尽くし、今後、画期的で効果的な政策が用意されるとは思えません。
既に、誰かが、何とかしてくれる、手を差し伸べて助けてくれる、そんな甘い考えが通用するような状況ではありません。
この事実を理解された経営者は、冷静に適切なタイミングで決断しようとされています。
既に決断をされた事業者も少なくありません。
勝算をもって、残資金の大半を経営改善に投資し、再生を図っている事業者もおられます。
M&Aや事業不動産の処分により、従業員の雇用や取引先を守ろうとされる事業者は少なくありません。
早い段階で整理をして、被害を最小限に食い止めた事業者もおられました。
これらの事業者の判断が、最善の結果であったのかは、この状況では未だ判りません。
しかし、最悪の事態を回避した決断であったと、断言できます。
そして、事業者は、最善の努力と決断を実施されたのではないでしょうか。
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