信用保証協会の代位弁済・・・


信用保証協会は、中小零細事業者にとって、今や資金繰り確保のためには必要不可欠な存在となっています。

ところが、それほど重要な存在にも関わらず、信用保証協会の目的や存在意義,さらには具体的な活動やその傾向などについてはあまり知られていません。

というよりも、根本的に勘違いして捉えられていることも多く、その代表的なものが、期限の利益の喪失から代位弁済に絡む流れではないでしょうか。

本ブログでも、『信用保証協会と代位返済』については、何度もテーマとして取り上げましたが、再度、代位弁済の功罪について考えてみたいと思います。

 

資金繰りが厳しくなって、その関係の専門家に相談をすると、信用保証協会の保証付き融資の期限の利益の喪失をさせて、代位弁済されることを勧める方が多いようです。

ここだけの話ですが、専門家だけではなく、信用保証協会の保証付きで融資をしている金融機関の担当者さえもが。半ば強引に勧めることも珍しくありません。

『当行でリスケをするよりも、代位返済をした方が資金繰りは楽になりますよ・・・』などと言い、金融事故にすることを勧めるのですから驚いてしまいます。

たしかに、代位弁済は、資金繰りを楽にするという傾向はあるようです。

月々の支払いが、リスケで元金を棚上げして利息だけ支払っている時よりも、代位弁済後の支払いの方が少なくなることが多いのです。

厳しい経営状況の中で、支出が抑えられて資金繰りが楽になるなら有難い話ですから、そんな誘惑に乗せられて、実際に期限の利益の喪失をさせて代位弁済をされるのでしょう。

ところが、大事なことを忘れていたようです。

勧められるままに、甘い考えで、代位弁済を捉えていたのですが、その結果、金融事故を発生させたという現実を突き付けられることになるのです。

 

代位弁済により、資金繰りは楽になるかもしれませんが、信用が著しく棄損するという代償を支払わなければなりません。

現実として、信用情報に掲載をされる可能性が高く、完済しない限りは新たな融資をしてもらうことは不可能ですし、奥さんや子供さんさえも将来的に保証を拒否されるかもしれません。

さらには、信用保証協会は不動産を処分して債権を回収しようというスタンスが明確であり、不要な不動産は処分を迫られるでしょう。

もしも、事業に関連をする不動産まで処分を要求されれば、事業を維持するために資金繰りを確保する方法として代位弁済を選択したはずなのに、事業が維持できなくなってしまいます。

代位弁済には、こんな大きなリスクがあるということを、しっかりと理解したうえで向かい合わなければなりません。

代位弁済は、返済猶予・リスケの延長線上にあるのではなく、立派な金融事故の結果の行為であり、不良債権になるという事実を忘れないでください。

 

返済猶予をしても、未だ資金繰りは厳しく、どうしても代位弁済を考える必要がある状況ならば、その取組みについての可否を検討するためにも、関係する以下の基本事項を再確認していただきたいと思います。

まず信用保証協会についてですが、中小零細事業者が金融機関から融資を受ける際に、公的機関としてその保証人となって借入を容易にし、金融の円滑化を通じて、中小企業の支援を行うため設立された組織のことです。

全国の各都道府県と一部の大都市に信用保証協会が設立されており、金融機関の融資について保証を受ける代わりに保証料を支払うことになります。

信用保証協会は、当初はあくまでも保証をしている立場ですが、期限の利益の喪失をすると、代位弁済により求償権を得て、債権者の立場で債権回収に当たることになります。

続いて、期限の利益の喪失についてですが、通常の経営環境ではあまり耳にしない言葉だろうと思います。

我々債務者は、金融機関からの借入やローンで物品等を購入した場合に、一定の期日まで、長期に亘って分割で返済できる権利を契約により与えられます。

いわゆる、その期限の到来までは、債務を履行する必要がないという債務者の利益のことを期限の利益というのです。

ところが、この契約を破り約束通りに返済できなくなったり、確実に返済できないと金融機関が判断した場合などに、直ぐに全額を一括で弁済するように要求されるようになり、この変更を期限の利益の喪失といいます。

期限の利益の喪失をすると、債権者金融機関などから、内容証明郵便で期限の利益の喪失通知が届き、正式に不良債権として次の債権回収手続きに移るということになります。

経営危機場面では、極めて重要なキーワードなのです。

最後に、代位弁済とは、保証人が、債務者になり代わって、債権者に弁済をすることです。

信用保証協会の場合は、その保証する債務者が期限の利益の喪失をすると、債務者の保証をした信用保証協会に対して債権者は代位弁済を求め、代位弁済が実行されると債権者が原債権者(金融機関等)から信用保証協会に変わります。

そして、信用保証協会は求償権をもって、債権回収することになるのです。

 

代位弁済は、たしかに厳しい資金繰りを楽にしてくれる可能性があります。

ただ、期限の利益の喪失という金融事故後の行為であり、債務者としての環境が激変するということを忘れないでください。

曲がりなりにも正常債権として扱われていた返済猶予・リスケの状況から、金融事故となった不良債権として扱われるようになるのが現実なのです。

目的は、事業の維持でしょうから、その手段として代位弁済を選択すべきなのかを、しっかりとした視点で検討をしてください。

一度選択してしまうと、後戻りはできないのです。

 

 

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