金融機関を区別する・・・


 

世に言う『リスケ』、正式にはリスケジュールとか返済条件の変更と呼ばれますが、現在においては、珍しくも難しくもなくなりました。

 

金融機関からの借入についての返済条件を変更することですが、正しく表現すると、借入金の元本についての一定割合を一定期間に亘り返済猶予をしてもらうことです。

 

平成20年に発生したリーマンショックによる、中小零細企業の資金繰り破綻を防ぐために、当時の金融担当大臣であった亀井静香さんが、超法規的な大英断で施行した『中小企業金融円滑化法』により、リスケは中小零細企業の一般的な資金繰りの手段となったのです。

 

 

 

それまでは、リスケは簡単なものではありませんでした。

 

あくまでも債権者である金融機関と債務者である中小零細企業の民間対民間の交渉であり、金融機関に完全に主導権を握られた交渉でした。

 

様々なルールがあり、しっかりとした準備も必要となり、それでも金融機関が拒否すれば成立しないという難しいものだったのです。

 

リスケの対応だけを専門とするコンサルタントが、数多く存在するほどだったのです。

 

 

ところが、『中小企業金融円滑化法』が成立すると状況は一変します。

 

極端に、簡単になったのです。

 

前提となる一定の準備やルールはありますが、法律をバックボーンとして、リスケを推進するような状況ですから、取組みの流れが明確になり素人でも対応が出来るようになりました。

 

ルールや準備についても、けっして難しいものではなく、専門的な知識が無くても、十分に対応ができる範囲であり、あくまでも中小零細企業の資金繰りを優先しようという制度だったと思います。

 

 

その中で、明確となったルールに、債権者対応の横並びがあります。

 

以前から、大きな方向性としては、リスケについては債権者横並びの暗黙のルールは存在しました。

 

借入のある債権者金融機関については、ほぼ同じタイミングで、同じ内容でリスケに取組むということです。

 

これが、中小企業金融円滑化法の成立後は、法律として具体化されて明確になりました。

 

全ての債権者金融機関が同じ条件で取組むということが前提になり、さらに債務者の他の債権者との対応についての情報開示が求められるようになりました。

 

それまでは、いくら債権者とはいえ、他行との取引内容まで開示させる権限はありませんでしたが、再生を目指して経営改善を実施するという建前の下で、債権者金融機関同士で債務者情報を共有できるようになったのです。

 

これは、当然のように思える内容ですが、実は、債務者にとっては厳しいルールになりました。

 

 

 

同じ債権者だとはいっても、その借入内容や条件は違います。

 

第3者の連帯保証人がついていたり、大事な不動産が担保にとられていたりと、債権者によって様々であり、場合によれば優先して弁済したい債権者もあるかもしれません。

 

しかし、それが完全に否定され、横並びが条件となりましたから、無理して返済を続けて破綻したり、自宅を失う結果になったりという事例も珍しくありませんでした。

 

 

中小企業金融円滑化法が終了以降、この横並びの原則はどうなったのでしょうか。

 

建前として、横並びの原則は残っています。

 

しかし、本音としては、原則は崩れつつあるといえます。

 

たとえば、個人事業主で、自宅のローンだけ正常に弁済し、他の債権者はリスケをするという様な事例が成功するようになってきました。

 

債権者平等の原則で、以前なら拒否された内容ですが、様々な根拠を用意すれば、同意をとるのも可能な状況になってきたといえます。

 

当然、いつまでも、この条件で同意がとれるものではありませんが、1年間の期間限定などであれば、この間を活用して有効な対策を実施することにより効果的な結果を得ることができるかもしれません。

 

何が大事なのか、それを根拠に対応してみてください。

 

 

 

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