事業再生の実例

「相談してよかった」

その言葉が何よりの喜びです。

平成15年 2月からご相談を開始して、様々な厳しい経営状況におかれたご相談者のお話をお伺いし、それぞれの状況に合わせたアドバイスをさせていただき、その実績は1300件を超えました。
全てのご相談者が、それぞれに事情をお持ちで、全く同じパターンの解決事例などありませんが、答えの見つけられない資金繰り地獄から解放され、落ち着いた安心のある人生が得られたという共通点があります。
経営者が、どの様に経営危機打開に取り組まれて、新しい人生をスタートされたのか、その代表的な解決事例をご紹介いたします。

実例
1
リスケジュールで、資金繰りを確保し、その間に事業に注力して事業再生を実現建設業の代表取締役(年商3億9000万円)

和歌山の地方都市で総合建設業を経営されるGさんは、私の友人の紹介でご相談に来られました。
Gさんのお父さんは、有名な立志伝中の人物で、今でも地元では隠然たる力をお持ちです。Gさんが代表取締役をする会社も地域一番の総合建設業で、Gさん自身も建設団体の役員を務めるほどの有力者です。

厳しい環境の中でも、堅実に経営を続けてこられたのですが、数年前に土地を購入し、自社で開発をして売却しようとした計画が頓挫したのです。土地の購入費用は大半が借入ですから、その返済負担が資金繰りを圧迫し続けてきました。
さらに、最近の公共事業は叩き合いの利益の薄い受注しかできず、原価も高騰して予算管理をしても利益を圧縮します。
そんな状況に追い討ちをかけるように、突然の経営環境の変化により金融機関の不動産融資の削減が続き、さすがにGさんも最悪の結果を覚悟されたのです。
お話をお伺いすると、借入は地元の地方銀行だけからであり、本業は今でも立派に黒字を確保されており、今後も必ず営業黒字を維持する自信があるとのことですから、これなら、会社の再生は十分に可能です。
借入の返済負担が大きいために、資金繰りが成立しないだけですから、返済を減らせばいいだけという簡単な図式になります。
Gさんは、借入時の契約どおりに返済しなければ、すぐに法的手続きをされて、会社は倒産し資産も全て失うしかないという、間違った知識しか持たれていませんでした。しかも、Gさんの会社と地方銀行は非常に良好な関係にありますから、所有する不要不動産の一部を売却して、借入金の一部も返済することにより交渉は難しいとは思われません。
基本的な処理スキームを打ち合わせたのち、Gさんはすぐに地方銀行とリスケジュールの交渉を始められましたが、その対応は、こちらの予想以上に良いものでした。
Gさんの会社の破綻は、地域経済に及ぼす影響が大きすぎ、地方銀行の抱える他のお客様も連鎖的に経営破綻してしまう可能性まであり、地方銀行のもっとも恐れるところだったようです。
何度かのリスケジュール交渉の結果、駐車場にしている土地を売却して返済に充てることを条件に、元金を1年間据え置き、金利だけ支払うことで地方銀行は了解し、1年後には更新について再度交渉することとなりました。

Gさんは、1年の間、資金繰りの悩みから開放され、計画が頓挫した開発計画に全力を傾けることが出来て、プロジェクトとして黒字を確保し成功することができました。
その結果、財務的に問題のない健全な会社に再生することが出来たのです。

  • リスケジュール
  • 資金繰り
  • 事業再生
実例
2
リスケジュールにより資金繰りを確保し、その間に経営改善に取組み事業再生を実現飲食業の代表取締役(年商1億3000万円)

平成21年12月に施行された中小企業金融円滑化法により、法的根拠を得られたリスケジュールは、今では正常な経済行為として扱われるまでになっています。
ところが、リスケジュールが社会的認知を得たこの環境においても、取り組むことに抵抗感を持たれる経営者は少なくありません。しかし、中小零細企業の事業再生においては、必要不可欠な手段だといえます。

リスケジュールに取り組むのは、経営者としては、たしかに勇気のいるものです。飲食店を経営されているAさんも、以前から知識としては持っておられましたが、今後の金融機関とのお付き合いや信用不安について考えると、リスケジュールに取り組む勇気が持てずに無理な資金繰りを継続されていました。 しかし、4店舗目としてオープンしたお店が、当初の売上予想を大きく下回る業績となり状況は一変してしまったのです。
新規店舗をオープンするために借入した返済負担が、資金繰りに大きく圧し掛かり、月末になると本業はそっちのけで資金繰りに奔走しなければならない状況に陥り、将来のことを考えると不安で仕事に力が入りません。そのせいか、売上は下降を続け、資金繰りはさらに悪化をしていきます。
幸い、本業はなんとか黒字を維持し続けておりますので、借入金の返済負担さえなければ資金繰りは確保できる状況です。もはや返済猶予に躊躇する理由は見当たらず、金融機関にお願いしてリスケジュールに取り組むしかありません。
リスケジュールに取り組む決断をしたAさんは、経営危機での基本的な知識などを身に付け、1年間の元金100%棚上げを条件に金融機関とリスケジュールの交渉に臨まれました。
その結果は、いったい何を恐れて躊躇していたのかというほどに、金融機関の対応は柔軟でスムーズに交渉は進み、要望通りの結果を得ることができたのです。
これで、1年間は借入金の返済負担が無くなり、資金繰りの苦労からも開放され、本業の飲食業に特化できます。
これが最後のチャンスと、Aさんは必死で経営改善と再生に取り組まれ、赤字の常態化した新店舗を含む2店舗を居抜けで知人に売却し、残り2店舗だけでの営業により業績も急回復し、リスケジュール終了とともに正常返済に戻すことができたのです。

Aさんの場合は、資金繰り悪化時での知識がないために、不安が先行しリスケジュールに取り組めす、前向きな経営改善を実施することができなかったのが経営危機の原因になります。
正しい経営危機での知識を身につけ、勇気を持ってリスケジュールに取り組んだことにより、想像していたより早く会社再生を果たすことができました。

  • リスケジュール
  • 資金繰り
  • 経営改善
  • 事業再生
実例
3
強硬にリスケジュールに取組み、資金繰りを確保したことで事業再生を実現建設業の代表取締役(年商8億7000万円)

金融機関も、リスケジュールをした方が得だと判断すれば、債務者の要望にも柔軟に対応してくれる時代になりました。リスケジュールについて、しっかりとした根拠を金融機関に示すことができれば、前向きな対応してくれるでしょうし、更新さえもそれほど難しくはありません。
更新を含む2年間の返済猶予により、事業再生を果たして正常返済に戻した建設業をご紹介します。

総合建設業を経営されるBさんは堅実な経営を続け、その地域ではトップ規模の業績を誇っておられますが、建設業を取り巻く様々な問題や、経営環境の悪化などのマイナス要因が続くなかで、Bさんの会社も徐々に資金繰りが厳しくなっていきました。
資金繰りを確保するため、工事見合いの手形貸付のリスケジュール(ジャンプ)について金融機関に相談もしましたが、手形の不渡りや法的手続きを臭わされ、第3者の連帯保証人も含め大変なことになると脅されて、八方ふさがりの状況に追い込まれています。
その金融機関は、債権回収の姿勢が厳しいことで有名であり、金融の知識が乏しいBさんに対して根拠の無い脅しをしてきたのです。
金融機関の脅しに恐怖を感じつつも、このままではいずれは資金繰りが破たんするのは間違いなく、倒産を回避するために手をこまねいているわけにもいきません。そこで、インターネットや本で色々と調べたり専門家に相談したりして知識を得ると、金融機関の主張する脅しが全く根拠のないものであると判りました。
手形貸付が不渡りにならないことや、債権者の法的手続き等の対応について知識を得たBさんは、資金繰りを確保し経営を維持するためにはリスケジュールしかないと判断し、金融機関と前向きに取り組むことを決められたのです。
手形貸付のリスケジュールができなければ倒産するしかないという前提で、借入金全てのリスケジュールの交渉に強い姿勢で臨み、リスケジュールが出来れば必ず借入金を完済できることを説明し、とうとう金融機関に承諾させたのです。

リスケジュールは、1度更新して2年間に亘りましたが、その間に第3者の連帯保証人をBさんの母親に変更することにも成功し、徹底したリストラの実行などという経営改善の実施や、地域の有力建材店の支援を仰ぐことにより、見事に経営を立て直して事業再生を果たされ、2年後には正常な返済に戻すことができたのです。 Bさんの場合は、建設業界の環境が厳しい中でも黒字を維持し続けていたのに、金融機関の様々な根拠無き対応により不安が拡大し、それが原因で業績を悪化させ最悪の事態も想定できる状況にまでなっていただけでした。
リスケジュールという中小零細企業再生の特効薬を、経営危機での知識を得たうえで前向きに活用し、さらに、債権者である金融機関には徹底的に安心を与えたことで、従業員や取引先に大きな負担をかけることなく事業再生を果たされた事例です。

  • リスケジュール
  • 資金繰り
  • 経営改善
  • 事業再生
実例
4
中小事業者の経営危機打開3点セットの活用で事業と人生の確保建設業の常務取締役(年商3億2000万円)

当社のセミナーを聞かれた方が個別に相談に来られました。
建設専門業種の下請けが中心の会社で、実際の経営責任者である社長の長男である常務がご相談者です。
長年の建設不況が原因で借入が大幅に増加し、返済のための借入を繰り返している状態でしたが、常務の事業意欲が非常に高く前向きな考えをお持ちでした。
そこで、事業の維持を最優先にするため、中小事業者の経営危機打開の3点セット
1. リスケジュールによる資金繰り確保
2. 事業の維持を万全にするために第2会社の設立・運営
3. 必要資産の予防的保全
この三点について、徹底的に取り組み、更に、第2会社に移行した事業についても、具体的な経営改善を実施することになります。
リスケジュールは、元金の1部棚上げに始まり、元金全額の棚上げ,金利の支払停止と続きましたが、最終的に期限の利益の喪失をして不良債権となりました。その後、サービサーに債権譲渡されることにより、債権総額の3%程で和解するコツができました。
自宅と事業用不動産を維持したうえで、現在は第2会社で健全な経営をされています。

  • リスケジュール
  • 資産の保全
  • 第2会社
  • 事業維持
実例
5
債権者集会の開催により、連鎖倒産を出さずに任意整理製造業の代表取締役(年商4億5000万円)

得意先の大手服飾会社が倒産し、急激に資金繰りが悪化した服飾製造業のご高齢の社長が飛込みで相談に来られました。
当初の相談内容は、経営の続行が不可能であるので、任意整理をしたいとのことでした。
しかし、財務諸表などで状況を確認してみると、下請けには支払いが出来る資金が残っていないことや、今後の対策が何らとられていないことが判りました。取引先の連鎖倒産の発生を防ぐことや、従業員の人生を考えれば、このまま単純に任意整理をする訳にはいきません。
先に金融機関とリスケジュールを実施して当座の資金繰りを確保し、その間に最低限の資産の保全や任意整理の準備を進めたのです。
5ヵ月後、金融機関を除く取引先などの債権者を集め、経営説明会議と銘打って債権者集会を開催しました。経営状況を開示したうえで実質破綻状況であることを告げ、本来は破産を選択すべき状況であると説明をしました。しかし、破産をすれば配当はほぼゼロになるため、それでは経営者としての責任が果たせないので経営説明会議を開き、残った資金を取引先に優先的に支払いさせてほしいと説明をしました。この案に同意をいただければ18%の配当が可能であることを告げると、参加者全員から承諾を得ることが出来たのです。
結果、2か月後には、全ての配当をすることかできて、連鎖倒産を発生させることもなく、従業員も新たな職場を得ることかできました。

債権者集会を開催し、取引先に優先的に配当することにより、任意整理はスムーズに進めることかできました。社長は、今は年金生活で、たまに債権者から連絡があるぐらいで、のんびりとした日常を過ごされています。

  • リスケジュール
  • 資金繰り
  • 資産の保全
  • 任意整理
実例
6
第2会社を活用して事業を維持し、現会社は任意整理をして人生確保製造業の代表取締役(年商4億6000万円)

経営者には様々な責任が圧し掛かっており、安易に自分のことだけを考えるわけにはいきません。 従業員の生活や取引先の仕事、さらに家族の人生までも考慮した対応が、経営危機にある経営者には求められるのです。
現状の形態での黒字が維持できず、企業を整理するしか方法がない場合でも、第2会社の活用により、事業と守るべきものを守った製造業の実例をご紹介いたします。

製造業を営むCさんは、数社のメーカーに部品を納めていますが、ここ数年は発注量が極端に減少して売上が落ち込み、今まで積み重なった借入の返済負担も重荷になり、急激に資金繰りが厳しくなってしまいました。 本業も、黒字を維持するのが難しい状況で、メーカーの支払条件も徐々に厳しくなってきています。 そんな時に、長年に亘り営業を取り仕切ってきた常務が、一部社員を引き連れ独立をすることになり、条件の良い得意先の多くとの取引をも開始しました。
残ったのは就業内容の良くない従業員や、条件の悪い得意先だけですから、これでは、Aさんも経営の継続を諦めるしかありません。
しかし、法的な破産を選択すれば、配当の多くは金融機関の債権に充てられ、仕入先業者には僅かな配当しかできず連鎖倒産する可能性があります。
Aさんは、取引先を守るために勇気を出して任意整理を選択し、自ら債権者を集めて実質は倒産である状況を説明し、金融機関からの借入金を棚上げして、配当できる資金は全て仕入先業者に支払うことで取引先に了承を取り付けました。
金融機関からの借入金の担保に入っていた工場は、期限の利益の喪失後に競売をされましたが、評価額が出た段階で売却基準価格の約1.2倍の金額で、元常務の会社が任意売却で買い取りました。その後、常務の会社は製造拠点をその工場に移し、工場にある製造設備も活用して業務を引き継いでいます。
今、Cさんの会社は休眠会社となり、Cさんは金融機関と返済について交渉しながら、元常務の会社で昔からの従業員や取引業者と一緒に、アルバイトをして生計を立てておられます。

経営危機に陥った状況で、幹部が従業員や得意先を引き連れて独立するのは、世間ではよくある事例です。
Cさんの場合は、元常務が状況を理解し、協力的な立場で対応してくれたため、従業員の雇用や取引先の業務が確保できたうえ、Aさんの生活も維持できた事例です。

  • 資産の保全
  • 第2会社
  • 任意整理
  • 事業維持
実例
7
生前贈与と相続放棄を活用して事業を維持し、資産も確保して相続人の人生確保不動産業の代表取締役(年商1億9000万円)

ここ最近、連帯保証人の問題は大きく改善をされてきましたが、旧来からの連帯保証人制度は、先進国では日本でしか見られない非人道的な制度といえます。
しかも、保証人の地位は、保証債務として相続の対象となるため、事業承継や企業再生の場面では難しい対応を迫られることになり、現実的に保証債務の相続を回避するために相続放棄を選択し、事業の承継・継続を諦めるしかなかった事例が多いのです。
今回は、生前贈与と相続放棄を活用し、事業を維持された実例をご紹介します。

Dさんは、不動産仲介業を営んでおられます。
会社が入っている駅前のビルをはじめ、いくつかの不動産を所有されていますが、金融機関からの事業資金等の多額の借入金の担保となっており、不動産市況が低迷する環境では債務超過となっているのが現実です。
会社の財務内容や不動産業界の状況を考えると、将来の展望には常に不安が付きまとい、特に後継者として働いている子供達の将来が心配なため、今後の対策を専門家に相談し、生前贈与の活用を実施することにされました。

収益性の高い駅前ビルは幸いにして無担保であったたため、数年かけて法定相続人である夫人や子供達に生前贈与するなどして所有権を移されました。
家族が住む自宅は、住宅ローンの抵当権が第1順位に設定され残債が3800万円程で、事業の借入金の担保が第2順位についていますが、実勢評価としては3000万円ほどで、住宅ローンさえ正常に維持すれば無剰余の状況です。
Bさんの二男は、独立して入居斡旋等の管理業務を手掛ける会社を設立し、万が一の事態においても影響を受けないようにしました。そして、この様な事実を、事前に、債権者である金融機関に説明し伝えていました。

Dさんは、その様な対策を終えて2年後、安心したかのように亡くなられました。
不動産業が厳しい経営環境で、Dさんの子供達は事業の相続を断念するしかありません。
子供達と夫人は相続放棄をすることにより、連帯保証人としての保証債務から逃れ、会社はDさんの長男が代表者として残り、休眠の手続きをとられました。
債権者である金融機関は、代表者になった長男に連帯保証を求めましたが、長男には見るべき資産もなく応じる必要はありません。
債務者企業が休眠し、連帯保証人は不在ですから、債権者の金融機関にとるべき道は限られており、担保権の実行による競売で僅かな債権を回収し、その後、無担保となった債権はサービサーに債権譲渡されました。

Dさんの次男が設立した会社は、賃貸の仲介や建物管理を中心に展開し、残った駅前ビルの収入と合わせて一族が生活できる利益を確保するとともに、自宅についても住宅ローンを返済することにより、無剰余での維持を可能にしています。
長男は、債務者企業の代表者として、時々は債権者より文書により連絡がありますが、文書以外の債権回収は経年と共にほとんどなくなりました。
Dさんの場合は、早い段階から準備し、時間をかけて対策を講じた成功事例です。
保証債務の相続放棄が絡む場合は、短期的に事業と資産を維持するのが難しく、時間をかけて税法上の生前贈与と民法上の相続放棄を組み合わせることが求められます。

  • 不動産活用
  • 第2会社
  • 任意整理
  • 事業維持
実例
8
別会社に事業を譲渡して任意整理をしたうえで、無い袖は振れない状況でサービサー等と和解飲食業の代表者(年商8700万円)

資金繰りが悪化すると、すぐに経営者は倒産が頭をよぎるようです。
中小零細企業は、経営者が断念しない限り簡単に倒産をするものではなく、借入金の返済を元金・利子ともに停止して金融事故になりながらも、事業を維持されている事例は少なくありません。

ラーメン店を経営されているEさんは、ラーメンブームにも乗り新規出店を積極的に展開しましたが、最近は競争激化により、新規出店した店の赤字が慢性化して資金繰りが急激に悪化してしまいました。
このままでは、経営が破綻して全ての店を失うと考えたCさんは、採算性の低下した店舗を店長等に売却したりして資金繰りを確保するとともに、徹底したリストラを実行し経費を切り詰めました。しかし、飲食業界を覆う経営環境の悪化は、この程度で対応できるものではなかったようで、本業の黒字は回復せず、Eさんが自分の給与を大幅に減額しても資金が不足する状況なのです。
金融機関からの借入について返済猶予も考えましたが、利子を支払う余力さえなくなり、半ば、事業の継続を諦めたEさんは、唯一の黒字店である本店を甥の会社に譲渡したうえで、赤字店を全て閉鎖し、借入金の返済も完全に止めてしまわれたのです。

連帯保証人はEさんだけで、担保も付いていない借入金は、当然のごとく3カ月後に期限の利益の喪失をして金融事故となり、債権者である金融機関は債権回収を本格化させました。
金融機関は可能な限りの法的手続きに着手し、支払の訴訟にも勝訴し債務名義もとりましたが、債権回収に充当すべき対象が見当たりません。
目ぼしい資産は何も残っておらず、営業を続けている本店も第3者に譲渡されており、差押等による債権回収ができない状況ですから打つ手がありません。

本店の譲渡について詐害行為の可能性も疑ったようですが、正式な営業譲渡で書類等のエビデンスも完備されていますし、譲渡資金も預金口座に振り込まれていますから、金融機関も勝ち目がないと考え諦めたのか、結局は詐害行為の取り消し請求の訴訟もおこされませんでした。
最終的に、金融機関は債権をサービサーに債権譲渡するしかなくなり、Eさんはサービサーと僅かな額で和解することにより、最終的に債務は全て無くなったのです。
甥の会社に譲渡した本店は、つけ麺ブームも手伝って業績を向上させており、現在、Eさんは元の本店でアルバイトをしながら、将来的な本店の 買い戻しを甥と相談されています。

結果として、不作為の本店譲渡が功を奏して事業を維持できたのですが、債権回収のための差押対象資産が全く残っていなかったことが、早い段階でのサービサーへの債権譲渡を実行させ、低額での和解につながった事例です。
中小零細企業は、大企業と比較して法的に保護されない場合が多いものですが、経営者の取り組み方次第により企業再生がし易いという特徴があります。
経営者が諦めない気持ちで取り組むことが出来れば、簡単に倒産などしないのです。

  • 資産の保全
  • 第2会社
  • 任意整理
  • 事業維持
実例
9
自宅を保全したうえで、担保収益不動産を任意売却で処分し、大きな手元資金を確保マンション賃貸業の個人(年商1900万円)

マンションやアパートなどの収益不動産を建築されたお客様からの相談は、今も絶えることなく続いています。
東大阪でマンションを経営されるFさんもそのお一人です。
本業は設備工事の技術者ですが、設計事務所の友人に勧められて、バブル期に父親から相続した土地に賃貸マンションを建設され、副業として経営を始められました。
建設後しばらくは、夫婦でヨーロッパ旅行に行ったり外車を購入したりと、想定通りの利益も上がり順調でしたが、バブルが崩壊し2年ほど経過すると、空き家が目立ち始めたのです。
賃貸戸数は全部で28件ありますが、多い時にはそのうちの7件が空き家という状況にもなり、借入の返済や経費を支払うと利益が残らなくなってしまいます。
仕方がないので、賃料よりも入居率を優先させるために大幅に家賃設定を下げましたが、9割程の入居率を確保するのが精一杯です。それでも借入金利が低かったため、何とか資金繰りが回るという状況が続きました。ところが、突然に金利が上がり始め、金融機関の申し入れ通りに金利を支払うと、利益が残らないどころか追い金が毎月必要となってしまう状況になってしまい、手元資金をつぎ込むなどしてなんとか正常に返済を続けてきました。
しかし、家賃はますます減少傾向にあり、入居率も悪化の一途を辿り、手元資金が底を尽く状況では手の打ちようがありません。
Fさんが私共に相談に来られた時には、毎月、20万円の追い金が必要な状況となっていました。その時のAさんのめぼしい資産は、無担保の自宅とわずかな預金だけで、マンションは担保にとられており、売却しても1億5000万円を超える残債務が残るという状況でした。ご相談の要望は、何とか破産を回避して、仕事と住む家だけでも確保できないかという内容でした。
とりあえず、マンションからの利益で収支が賄え、少しでも手元に利益が残るように、毎月の金融機関の返済額を減らすリスケジュールの交渉をしなければなりません。しかし、無担保の自宅を間違いなく担保として要求されるでしょうから、事前に資産を予防的に保全する必要しなければなりません。
自宅は、知人に適正価格で売却し、Fさんの娘さんが知人と賃貸契約を結び、Aさん夫婦が住めるようにしました。(セール&リースバック方式) 預金は違う金融機関に移し、基本的な資産保全をしたうえで金融機関とリスケジュール交渉を開始です。
ところが、第1順位の担保権を持つメガバンクのMS銀行が、なかなか返済猶予交渉で色よい返事をしてくれません。競売になっても全額回収できる100%担保保全のためか妙に強気で、交渉を重ねても色よい返事は貰えそうにありません。
このまま交渉を続けても、無駄に時間が過ぎて返済資金が底をつき破綻するしかなくなると判断し、強引に返済をストップして、当然のごとく3ヵ月後に期限の利益の喪失をしました。
これで不良債権になってしまったわけですが、現状として元金・利息とも停止した状況になり、家賃は全て手元に残るという環境になったわけです。
それからすぐに、第2順位の担保権を持つK信金が、任意売却を勧めてきました。
Fさんは、既にマンションの維持を諦めていますから、すぐに任意売却を承諾し、その旨をMS銀行にも伝えましたが、MS銀行は完全に担保保全できていますから任意売却に異存はありません。
ここから、債権者金融機関に干渉もされずに、時間をかけて条件の良い購入者を探し、数ヵ月後、理想通りの購入者が見つかりました。
金融機関が提示している相場に近い金額での購入のうえ、購入に関して、Fさんの奥様が経営されている設計事務所と不動産活用のコンサルタント契約を結んでいただき、正式に任意売却が決定しました。

返済を止めてから売却までの9ヶ月間で、手元には1400万円程の家賃が残り、奥様の会社にもコンサルタント費用としての売上が入ったのです。
任意売却後、K信金の残債権は4ヶ月でサービサーに債権譲渡され、債権額の4%程度の700万円を支払うことで和解が成立しました。Fさんは、マンションこそ失いましたが、自宅に住み続けることができ、債務も全て無くなったのです。そして、返済に悩む必要が無くなったことが、なによりも嬉しいそうです。

  • 不動産活用
  • 第2会社
  • 任意整理
  • 事業維持
実例
10
自宅を守ったうえで、任意整理により事業も維持し人生確保飲食業の代表取締役(年商7000万円)

会社を経営するにおいて、借入を必要としないで経営を続けるのは難しいものです。
適度な借入は、企業の発展には必要不可欠なものだと思いますが、油断するといつのまにか増えていってしまいます。そして、限度を超えた借入により、資金が回らない状況に陥って、返済のために四苦八苦してしまうのです。

私のセミナーに参加し熱心に話も聴いていただいたHさんが、セミナー終了後すぐにご相談の予約をくださいました。
セミナーに参加していただき、「目から鱗が落ちた気がしました。」とまで言ってくださいましたので、私もやる気満々でご相談に臨みます。
Hさんは、泉南方面で2件の飲食店を経営されおり、ここ数年赤字つづきで、自己破産や夜逃げは当然のこと自殺までも考えている状況だとのことです。
そうなった原因は、2店目の開業資金の借り入れでした。1店目の経営があまりにも順調だったため、ついつい金融機関の誘いにのって2店目を出店したのですが、立地条件が悪くて売上があがらず、人件費の支払さえままならない状況に陥り、返済のための借入も必要になる自転車操業です。借入金額の総額はそれほど増えていないのに、短期借入の本数が増加したために毎月の返済額がドンドン増えていき、とうとうノンバンクからも返済するための資金を借りるようになってしまいました。

この状況では、現状のままでの再生は諦めるべきです。
しかし、事業と人生は諦めるべきではありません。

幸い、自宅の担保は住宅ローンだけで、Hさんの奥様も連帯保証人になっておられませんので、Hさんと奥様は離婚し慰謝料として自宅を奥様に渡しました。
これでHさんには目ぼしい資産は残っておりません。あとは、タイミングを見計らうだけとなり、取引業者への支払期日の3日前に債権者集会を開催し任意整理に踏み切りました。
債権者集会は、弁護士もいない状況で、金融機関を除く取引業者だけに集まっていただいての開催となりましたが、今までHさんの取引先との対応が良かったのか、大きな異議もなくわずか45分で終了しました。
その後、債権者集会で選任した債権者委員に処理を依頼し、わずか12%の配当でしたが、3ヶ月ほどで大方の取引先の同意を取り付けて任意整理もほぼ終えることができました。
棚上げした金融機関の債務はまだ残っていますが、気長に交渉を続けるしかありません。もう、法的手続きで差し押さえされる資産も残っていないのですから。
Hさんは、自宅を担保に資金を借入して飲食店の経営を始められた元奥様の下で、従業員として汗を流して働いておられます。
もう、経営者ではありませんが、生き生きと楽しそうに働いておられ、仕事が終われば、元奥様の待つ自宅に戻る毎日です。

  • 不動産活用
  • 第2会社
  • 任意整理
  • 事業維持
実例
11
債権放棄を前提とした事業譲渡により、事業承継が成功食品小売業の代表取締役(年商7億8000万円)

地方の中核都市で、食品小売業を展開されているAさんは、地元の老舗として複数の店舗を経営をされ、消費者から信頼を得られ喜ばれてきました。
しかし、長年に亘る経済構造の変化により業績が悪化傾向にあるのと、Aさんご本人の体調が思わしくなく、後継者が不在のために事業を整理したいというのがご希望です。
財務内容をチェックすると、それなりの大きな金融負債が存在し、その返済負担が大きく圧し掛かり、ここ数年は税引き後の赤字が続いています。このまま継続しても良い結果につながらず、場合によれば経営破綻の可能性さえ否定できない状況だといえるでしょう。
典型的な、金融債務超過によって事業承継が進まないパターンですが、Aさんのご要望は、負債を全て処理したうえで、綺麗に事業を整理できないかというものです。
簡単なことではありませんが、Aさんには、老舗としての信頼と多くのお得意様という、無形の武器あります。
これは、同業者にとっては、大金を払ってでも手に入れたい魅力だといえますので、事業を譲渡するスキームを選択することになり、ました。
ただ、過剰ともいえる、金融機関からの借入金を何とかしなければ、譲渡など成立するはずがありません。
そこで選択したのが、債権放棄を前提とした、事業の譲渡ということになります。
考え方としては、このままでは事業は維持できず、破産をするしかなくなる。その場合の配当は、債権額の僅か5%ほどにしかならない。
しかし、事業の譲渡をすることが出来れば、5%を大きく超える配当ができる可能性は高く、債権者に少しでも多く還元することが可能であるというものです。
債権者である金融機関にとっては、損失を減少させることのできる内容ですから、交渉の余地は十分にあります。
この段階で大事なのは、金融機関との交渉において、コンプライアンスの確保と信用ということになりますので、債権放棄の交渉に長けた弁護士さんと組んで、誠意をもって進めることがポイントとなります。
この方向で手続きを進めることになり、譲渡先を探すことにしましたが、債権放棄を前提とした購入希望者は直ぐに見つかりました。
この購入希望者さんとの交渉により、事業の譲渡価格を設定し、弁護士さんが債権者金融機関3行と交渉を開始されます。
交渉の中で、バンクミーティングの開催や中小企業支援協議会の関与,債務者企業の処理,保証債務者への対応など様々な要望が出され、それぞれを誠実にクリアーすることで、事業を譲渡するということで合意が得られました。
続いて、購入希望者の具体的なデューデリジェンスの実施により、譲渡額の精査が行われ、ほぼ当初想定の価格で同意が得られました。
その後、事業譲渡を実行することで、Aさんの事業は正式に購入者に譲渡されたのです。

この事業譲渡により、債権者金融機関は、破産であれば5%も配当を受けられないところを、18%の配当を受けられることができました。
購入者も、これだけの老舗企業の事業と看板を、安く手に入れ事ができました。
さらに、Aさんは、長年の懸案であった事業を上手く整理することかできて、借入金などの債務も残らないことになり、今はのんびりと人生を過ごすことが出来る様になりました。

  • 債権放棄
  • 事業譲渡
  • 事業承継
実例
12
M&Aにより事業を守り、債権放棄で保証債務も免除食品製造販売の代表取締役(年商5億2000万円)

Bさんは、中核都市で、食品の製造販売を、多店舗で展開をされており、色々なボランティア活動にも熱心で地元の名士でもあります。
堅実な経営を続けてこられましたが、リーマンショックにより大きなダメージを負い、最近の少子化により財務内容は悪化を続けています。
何とか打開しようと、事業展開を広げたり改善にも取り組みましたが、経営を立て直すまでには至りませんでした。資金繰りは徐々に悪化を続け、Bさんも腹をくくるしかなくなり、専門のコンサルタントに相談をされましたが、破産を想定していたのにM&Aを勧められたのです。

以前から、BさんもM&Aには興味を持っていましたが、金融機関からの借入金が多く、債務超過に陥っている状況では不可能だと思い込んでいたのです。ところが、そのコンサルタントは、債権放棄を組み入れて金融債務を圧縮し、M&Aの商品として魅力あるものにすれば、譲渡先は見つかるといいます。
現実的に、M&A仲介会社に依頼すると譲渡先は直ぐに見つかり、簡易デューデリで譲渡額まで提示されることになりました。
そして、コンサルタントのアドバイスで、M&Aと債権放棄の経験豊富な弁護士に依頼し、具体的にM&Aに取り組むことになりました。
弁護士が、メインバンクに打診をすると、専門公的機関の関与を条件にされたので、中小企業支援協議会を舞台にM&Aの交渉を進めることになったのです。
全ての債権者金融機関が揃ったバンクミーティングで、M&Aの概要が説明され、譲渡価格の提示や、債権放棄の可否について打ち合わせされます。
当初、債権者である金融機関は、債権放棄には否定的でしたが、何度かのバンクミーティングによる誠意ある説明により、既に実質破綻状況に陥っており、このままでは配当はほとんどないことが判りました。さらに、M&Aが実施されれば、譲渡価格から20%程度の配当も可能であるということが判り、金融機関の対応は前向きに変化しました。
その後、数回のバンクミーティングを経て、譲渡先候補が見つかってから約7ヶ月で、M&A(株式譲渡)の合意が得られることになったのです。
20%の配当を前提とした譲渡価格で、残債務は全て免除という好条件です。
しかも、Bさん自身の保証債務が、『経営者保証に関するガイドライン』により、全額免除になったことは何よりも大きいのではないでしょうか。

  • 債権放棄
  • M&A
  • 事業維持
実例
13
コロナ不況下で、債権者から追及されずに、全ての店舗を第二会社に譲渡し人生確保小売店の代表取締役(年商1億5000万円)

今や、破産したとしても、合法的に自宅を守れるという時代になりました。
会社が倒産したとしても、様々な選択肢が存在し、様々な展開が可能だという環境でもあります。
当然、事業を維持する複数の方法も選択肢に存在するのですが、そのためには、事業を維持するための資産を確保する必要があり、これが簡単ではありません。
特に、不動産の絡む事業用資産・・・代表的なものは店舗になりますが、その性質により、極めて守りにくい資産だといえます。しかし、それなりの手続きを踏めば、債権者に追及されることなく第2会社への譲渡も可能なのです。

コロナウイルス禍の環境では、第2会社への店舗の譲渡が随分と容易になったようです。
コロナウイルスによる景気悪化をストーリーに取り入れることにより、第2会社への店舗譲渡に経済的合理性を付与することが出来て、スムーズに取り組める可能性があるからなのです。

Aさんは、小売店を3店舗経営されていますが、ここ数年、業績が悪化して資金繰りも厳しくなり、破産も視野に入れる様な状況になりましたが、Aさんは第2会社の活用の可否について模索を始められました。
金融機関からの借入は全てリスケ中で金利だけ払っており、個人カードローンの借入も多く、国税・社保の支払も遅延しています。
事業は、営業赤字の状況ですが、ほとんど経営改善が実施されておらず、少し手を入れるだけで十分に業績回復が期待できるように思います。
有利子負債が重く圧し掛かって資金繰りを圧迫していますので、現状の事業形態での継続は困難ですが、人格の違う第二会社であれば、十分に事業を継続できる可能性があります。
幸い、Aさんには、しっかりした店長がおられたので、店長が独立して完全に人格の違う会社を設立し、その会社で事業と店舗の維持を図る方向で取組むことになったのです。

手続は以下の様になります。

第1段階
滞納している税金・社保を訪問し、現状の説明と今後の優先納税の意志を伝え、協力を依頼
第2段階
事業と店舗の譲渡が完結するまでの資金繰りの確保 1年程度は必要
同時に、店長さんが第2会社を設立
第3段階
経営改善計画の策定と、債権者への説明
不採算店の閉店について、事前に債権者同意を取り付ける
第4段階
閉店費用を回避するため、債権者同意のうえで第2会社に店舗を譲渡
譲渡費用から一部を債権者に弁済
この段階で、不採算店として、2店舗を譲渡し、優良店1店舗が残る
第5段階
残りの優良1店舗も、コロナウイルス禍により業績悪化
赤字垂れ流しのため事業譲渡を検討・・・債権者相談
第6段階
残1店舗を第2会社に事業譲渡
債権者同意の下、譲渡費用より一部弁済

取組みの大きな流れとしては以上の様になり、難しい手続きではないように思われます。手続きが自然であり、債権者に違和感を抱かせることがありませんでした。その結果、幸いにも、店舗全てを第2会社に譲渡することに成功しましたが、これはコロナウイルス禍による景気低迷を根拠にできたことも大きく影響していると思います。
会社はこんなに頑張っているのに、コロナウイルスの影響でどうしようもない・・・ということで、関係者全てが納得するしかなかったということなのでしょう。

  • コロナウイルス
  • 第2会社
  • 店舗譲渡
  • 事業維持