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間違いだらけの常識


経営危機にも様々な状況があり、軽微な経営危機を体験された経営者は多いでしょうが、経営破綻も視野に入れるような経営危機に直面された経営者は少ないと思います。
また、経営危機についてのお持ちの情報は、テレビや雑誌などで取得した誇張された情報や、知人等から教えられた聞きかじりの情報ぐらいで、過去の実体験や学習により、正しい対処法を取得されている経営者もほとんどおられないでしょう。

ご相談者とお話をしていて日々感じることは、何と間違った情報や知識が流布しているのかということです。 こんな情報を本当だと信じて対応すれば、考え方は後ろ向きに暗くなり、解決できることさえも失敗し、経営危機の打開などできるはずはありません。

経営危機打開の第1歩は、まず正しい知識を身につけることから始めるべきなのです。
ここでは、間違いだらけの常識として、経営危機の場面で誤解されている代表的な事例をご紹介いたします。

金融機関の担当者が毎日のように営業に来るから、うちの会社は問題ない・・・

確かに、純粋に営業に来ているのかもしれません。しかし、金融機関担当者の業務の中には顧客の情報収集が含まれており、頻繁に営業に訪れる様になったというのは、いざという時に対応するための情報を集めに来ていると考えるべきでしょう。
銀行が知らない資産を持っていないかとか、どこと取引しているか等の情報ですね。
この得られた情報は、銀行にある貴社の顧客台帳に直ぐに記載され、何かあったとき時に、貸出債権の回収手段とし使われることになります。
経営が厳しくなってから銀行の担当者が頻繁に来社するようになった場合は、ほぼ債権回収のための情報収集だと考え、余計な情報は流さないようにしてください。

資金繰りは厳しいけど、銀行にさえ正常に返済すれば問題ない・・・

支払いを必要とする債権者は金融機関だけではなく、従業員や取引先、さらには税金や社会保険の関係など様々な債権者が存在します。 本来は、全ての債権者に約束通りに支払うべきなのですが、資金繰りが厳しくなって支払原資が不足してくると、債権者別に支払うべき順序を考えなければなりません。 そんな時の考え方としては、支払いを遅延させたり止めたりする場合に影響の大きい順に優先して支払うということになります。 従業員は給料が貰えなければ生活が出来なくなりますし、取引先は支払いがなければ倒産しないとも限りませんが、金融機関は貴社の返済遅延ぐらいで経営に大きな影響を与えることなどありえません。 したがって、資金繰りが厳しくなれば、まず金融機関に無理をお願いすることから始め、万が一の事を考えて従業員と取引先を大事にすることが重要です。

金融機関への借入返済を少しでも遅らせれば、直ぐに法的手続きをされるから怖い・・・

そんな事はありません。金融機関との返済猶予は正常な経済活動であり、基本的なノウハウさえあればけっして難しいものではありません。 経営危機では、まず暫くの期間の資金繰りを確保することから始まりますが、資金が不足している場合は新たな借入よりも、資金繰りと連動させて返済猶予を検討すべきでしょう。 一般的には、法的手続きの着手は期限の利益の喪失をしてからになりますから、それまでは簡単に法的手続きをされるものではありません。 ただし、金融機関になんの相談もせず、強引に元利共に支払を止めたり、明らかな悪意が感じられる場合は金融機関も大きな問題として捉えることがありますから注意してください。

利息を止めて元金を返済すれば、借入残高が減るので都合が良いのでは・・・

理屈では、確かにそうなります。 しかし、返済猶予には金融機関の同意が必要ですので、債権者と債務者側双方の立場で考えてみる必要があるでしょう。 元金は返済するもので、金利は支払うものですから、金融機関にとって元金は商品で利息が利益ということになり、金融機関の利益である利息の減免についての交渉がいかに難しくなるかはご理解いただけると思います。 表現を変えれば、利息さえ支払っていれば正常債権だと考え堂々と胸を張っていて良いということになります。

手形貸付は、返済が遅れると不渡りにされてしまう・・・

そう考えてしまうのは自然ですし、世間的にもその様に思いこまれています。 手形貸付で切った手形は単名手形と言い、発行した銀行で不渡り処理にできる制度になっていますが、現実には手形貸付の担保となっている手形は交換提示されませんので、まず不渡りにされることはありません。 恐れず、冷静にジャンプなどの交渉してください。

返済猶予をすれば必ず当座取引が停止されてしまう・・・

難しいところです。 確かに返済猶予申し込んだことにより、無条件で当座取引を停止された事例もありますが、利息の支払を停止しても当座取引が継続している事例もあるのが事実です。 要は、日ごろからの、金融機関とのお付き合いによる信用度合と、返済猶予交渉においていかに誠意をもって金融機関と交渉するかということです。 最近は、返済猶予が正常な経済的行為と見なされる様になり、返済猶予の申し込みにより、当座取引が停止になることは少なくなりました。

金融機関への返済も、取引先への支払もできない・・・もう、破産して全てを失うしかないのか・・・

選択肢が、破産しかないというのは極めてまれだと思います。 経営危機のどんな場面においても、適切な対応方法はあり、選択肢がいくつも残されていることが多いものなのです。 経営危機を打開する手法は多様化していますし、もし整理を選択したとしても、その後に事業を再生させ人生を円滑に再スタートすることも十分に可能でしょう。 経営危機に陥った場合に大事なことは、出来るだけ早く打開に向けて動き出すことです。そして遅れてしまうと、万事休すで全てが終わってしまう可能性が高くなります。

連帯保証人や債権者に申し訳ない。だから夜逃げや自己破産をします・・・

これは、とんでもない話ですね。 この選択は、連帯保証人や債権者等の関係者に、もっとも迷惑を掛けることになります。 経営危機に陥ると、ほとんどの経営者は『破産』・『夜逃げ』・『自殺』というキーワードが脳裏を翳めるですが、破産はともかくも、夜逃げや自殺などは考える価値さえもないと断言できます。 自殺して、生命保険で債務を処理できたという極めて稀な事例もあるようですが、自殺についての生命保険会社の対応は厳しくなっていますし、残された家族や従業員は悲惨な対応を強いられることになります。 『破産』・『夜逃げ』・『自殺』は、経営者としての責任放棄でしかありませんから、逃げずに正面から取り組んでください。 必ず新しい人生が開けます。

借入は多いけど、担保を処分すれば残債は残っても請求をされない・・・

借金が返済できなくなっても、担保さえ処分して弁済すれば、残った債務は請求されないと思っておられる経営者が案外と多いものです。 担保の意義を考えれば、たしかにその様に考えても不思議ではありませんが、担保を処分しても残債務が残れば、無担保債権として請求をされることになります。 貸付時には、担保評価の6割から7割程しか貸してくれないのに、弁済時には担保以上の弁済を求めるのですから、世の中は、全て社会的強者(債権者)に都合よくできており、我々の様な社会的弱者は苦労し続けるようなシステムになっているようです。しかし、負けているわけにはいきません。

不渡りを2回出せば、事業を続けることはできない・・・

不渡りを2回出せば、倒産として扱われますから、当然に事業を続けることなど出来ないように思いますが、現実はそうとばかりも言えません。 不渡りを2回出すと、不渡り情報が流れて信用が著しく低下し、金融機関の当座取引も停止されてしまうというのが大きな問題となります、 しかし、不特定のお客様相手の商売などで現金決済が出来るようならば、事業の継続は可能ということになり、現実にも、そんな方は沢山おられます。

債権のプロが、時効など完成させる訳がない・・・

消滅時効により、借金の請求権が消滅することなどあるのでしょうか。 金融機関や信用保証協会,サービサーなどの債権のプロが、そんな甘い対応をしてくるとは考えにくいものですが、現実には、多くの借金が、時効により請求権を消滅させています。 時効は、狙ってできるものではなく、簡単に完成するものではありませんが、絶対に無理だというものでもありませんので、時効が完成する可能性を、少しでも高める方法を活用すれば、大きな負担となっている借金から突然に解放されるかもしれません。