親バカともいえる経営者は、今でも少なくありません。
息子を事業の後継者にしようと、入社をさせて教育はしているのに、苦労をさせようとはしない経営者もおられます。
『今は、経営が厳しいので・・・』と言われながら、金融機関との交渉やリストラなどといった厳しい業務は、息子には関与をさせずに自ら処理をされるのです。
せっかく逞しい経営者に育てられるチャンスなのに、こんな甘やかしをすると、後継者として本当に必要な経営の勉強ができません。
私は、随分と長い間、家庭菜園を趣味として楽しんでいます。
今も、数人の友人たちと共同で、奈良市東部の畑をお借りして、毎週日曜日に集って楽しんでいますが、本当に良い趣味だと思っています。
透き通った空気の下で、定期的に汗水流して野菜を作り、無農薬の安全な野菜を食すことかできる。
これだけでも十分に納得できる趣味なのですが、家庭菜園を通じて学べることが少なくないのです。
耕作する自然の中で、様々なことを教えられます。
『苦労』と『逞しさ』の重要性なども、家庭菜園に教えられました。
11月も過ぎると、家庭菜園の作業は随分と楽になってきます。
季節と寒さにより、草木の成長が著しく低下し、雑草を抜くという家庭菜園で一番大変な作業がなくなるからです。
ただ、雑草だけではなく、全ての草木の成長も停滞をしてしまいます。
この晩秋にも、レタスやホウレンソウ,チンゲン菜,春菊,ターサイなどの野菜の種を蒔きましたが、2か月ほど経過しても、収穫できるほどには成長しません。
横に広がり少しは大きくなりますが、上に伸びてくれないのです。
寒気に耐え、枯れないように、地に這いつくばって頑張っているのでしょうか。
冬場は、他に収穫できる野菜も少なく、自宅にお土産の必要な私としては、仕方がないので小さいながらも収穫しようとするのですが、これがなかなか抜けません。
根が、驚くほど、しっかりと張っているのです。
見える地上部は小さいのですが、土中の見えないところは夏場と同じように成長をしていました。
寒気の中で、苦労しながらも耐えて成長し、暖かくなるまで逞しく生き延びようとしていたのでしょう。
そういえば、以前に、ビニールのトンネル栽培と露天の二通りで、冬場にキャベツを作ったことがあります。
春に収穫をするのですが、寒気下の露天で作ったキャベツは、こじんまりしていますが固く結球して、味も濃くておいしいのです。
トンネル栽培のキャベツは、背丈は大きくなっていますがヒョロヒョロで結球も緩く、触感は柔らかいのですが歯ごたえはありません。
ぬくぬくとトンネル栽培という温室で育て、自然の中で苦労をさせていない分、美味しくないのです。
美味しい野菜を作ろうとすれば、苦労をさせろといいます。
寒気に晒したり、夏場に水を制限したりして、苦労させた野菜の方が、野菜も生き残ろうと頑張り、逞しくて美味しくなるようなのです。
この、『苦労』と『逞しさ』は、人間にも、そして後継者の教育にも当てはまるのではないでしょうか。
『逞しければ、それでいい・・・』
たしか、食品関係のテレビCMだったと思いますが、父子でキャンプファイヤーをしている場面で、お父さんが子供を見ながら呟かれた言葉だったと思います。
逞しい男に育ってほしいという、お父さんの願いを呟かれたもので、50年ほど前のCMが、今でもはっきり脳裏に残っているほど強いインパクトがありました。
現在では、逞しさの価値が下がってしまったのか、子に苦労をさせる親が少なくなったのではないでしょうか。
中小事業者の事業承継における後継者育成でも、同じことを感じる場面に遭遇します。
ご自身の後継者である息子さんに気を使いすぎて、苦労をさせようとしない経営者が少なくないのです。
苦労をさせたくないという傾向は、経営の厳しい局面では顕著になります。
自分が経営を厳しくしてしまったのだから、その対応や処理は自分ですると、経営危機対応に息子さんをタッチさせないのです。
見事な責任感だといえるのかもしれませんが、ちょっと勿体ないと思います。
逞しい後継者に育成する凄いチャンスなのに、息子さんに対応をさせなければ、頼んない経営者になってしまうかもしれません。
経営危機での、金融機関との交渉や取引先の対応などは、通常では経験したくでもできない、後継者としては貴重なチャンスなのです。
この機会では、経営者は敢えて後ろに下がり、後継者に経験を積ませるべきではないでしょうか。
その経験は、後継者に自信をつけて大きく成長をさせ、逞しい経営者にしてくれると思います。
『可愛い子には旅をさせよ・・・』
『獅子の子落とし・・・』
『親の甘茶が毒となる・・・』
同義のことわざは沢山あり、それほどに、苦労をさせることが大事だということなのでしょう。
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