隣県にある不動産が、事業を維持するためには、どうしても必要でした。
金融機関からの借入が返済できなくなり、金融事故になって債権の回収をされるようになりましたが、その不動産の存在は知られていません。
強制執行などして債権回収をしようとしても、存在が知られていなければ、その効力は発揮できませんから不動産は維持できるはずでした。
ところが、昨年の民法改正により、債権者が手続きを取ることで、不動産の存在が知られるようになってしまったのです。
不動産は高価であり、事業を維持するためには必要であったりして、価値のある維持し続けたい資産の代表だといえます。
そんな資産ですから、金融機関などの債権者にとっても、融資を保全するための重要な対象となります。
事務所のある不動産や社長の自宅など、金融機関が把握している不動産については、事業資金の融資に際しては担保として提供するように要求されるのが一般的ではないでしょうか。
しかし、債権者である金融機関が把握していない不動産については、債務者から情報として提供でもしない限り、知られることもなく担保になることもありません。
ところが、金融機関からの借入金が弁済できなくなるなどして金融事故になると、債権者は全力で債権回収をしてくることになります。
そのためには、債務者や保証人の所有資産も調べ上げ、特に価値の高い不動産などを債権回収の対象にしようとするのです。
債務者にすれば、事業に必要な資産などを、強制執行などにより処分されては事業の継続ができなくなりますから、何とか資産を守ろうとするのは自然な流れだといえるのかもしれません。
そんな、強制執行に備えて資産を守る方法が、『資産の予防的保全の三原則』として存在します。
その三原則が・・・
『資産の存在を知られない』
『資産に価値がない』
『資産の名義が違う』・・・ということになります。
不動産資産においても、この三原則を活用することで、ほぼ予防的に保全することが可能であり、その結果、事業を維持継続することが出来ました。
ところが、昨年の民法改正が、この三原則を大きく狂わせることになったのです。
本ブログでも何度かご紹介をしましたが、昨年の令和2年4月1日に民法改正が実施され、同時に民事執行法も改正をされました。
その中で、平成15年に施行された財産開示手続きが強化され、第3者からの情報取得手続も制度として運用されるようになりました。
そして、不動産資産も、この情報取得手続制度の対象となったのです。
債権者が、裁判所に申し立てることにより、第三者に債務者の所有する不動産資産について開示するように要求をします。
申し立てられた第三者は、債務者の不動産資産などについて、具体的な内容を記載した情報提供書を滞りなく提出することになり、債権者の知ることとなってしまいます。
その第三者が、不動産資産の場合は「東京法務局」となります。
東京法務局に、債務者の情報を提供するように申し立てすれば、全国津々浦々どこにあろうとも、債務者の所有する不動産は債権者に知られてしまうということになるのです。
今までは、所有する不動産資産について、債権者に簡単に把握されることなどはありませんでした。
他府県などの遠方にあり、債権者の把握していない不動産については、調べることが難しくて債権者に知られることは現実的には困難だったといえます。
ところが、昨年の民法改正に伴う第3者からの情報取得手続により、不動産は全国どこにあろうとも、債権者に知られるところとなりましたから、『資産の存在を知られない』により不動産は守れるという三原則の一角が崩れたのです。
不動産の第3者からの情報取得手続きは、先に債務名義を取ったうえで、事前に財産開示手続きの申し立てが必要となります。
したがって、突然に、不動産資産を知られるということではありません。
事前に、債務名義を取得するための訴訟などがあり、その後に財産開示手続きがありますから、第三者からの情報取得手続きへの着手は早い段階から予測できるということになります。
したがって、事業の維持に必要な不動産資産などを守るには『資産に価値がない』,『資産の名義が違う』という対策を活用することで、対応は可能ではないでしょうか。
ただ、有効な資産の保全対策である『資産の存在を知られない』については、効力が極端に劣化してしまったということなのです。
そして、注意していただきたいのは、今のところ、財産開示手続きや第三者からの情報取得手続きが債権回収で活用される場面は、随分と増えてはきましたが、未だそれ程に多くはないということになります。
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