商売とは、利益を上げる目的で、物を売り買いすることだそうです。
物だけでなく、情報や労働などを提供して、その対価を求めることが商売であり、出来るだけ多くの利益を確保することが目的となるのでしょう。
したがって、利益を確保できなかったり、損をすることなどは商売ではないということになります。
これは、当然のことなのでしょうが、果たして、このコロナウイルス禍の環境においても、この定義は通用するものなのでしょうか。
昨今の景気動向については、色んな人が、色んなことを言われます。
経済専門誌のアフターコロナ特集を読んでも、大きな方向性に違いはありませんが、具体的な内容は随分と違っているように思います。
結局のところ、アフターコロナなどといっても、具体的には誰も判っていないのではないでしょうか。
環境の変化が、想像を超える規模になってしまっており、多くの専門家は理解不能に陥り、とりあえず将来への警鐘を鳴らしておかないことには不安なのだろうと思います。
本来、環境悪化の先には、必ず『回復』があるのですが、このコロナ禍では、その回復が見えてこないのですから、専門家の経験も知識も通用しません。
我々は仕事柄、過去の事例と比較してしまうという傾向があるのですが、今回のコロナウイルスによる環境悪化は、過去に比較できる様な事例が存在しませんから困ります。
バブル崩壊でも、ITバブル崩壊でも、リーマンショックにおいても、景気悪化直後に一気に落ち込み、その後は回復傾向が見えてくるものなのですが、今回はその『回復』が何ら見えてこないから厄介なのです。
こんな環境でも、商売をしなければならないというのは悲惨です。
どれだけ努力をしても、コロナウイルスという外因により、売上が確保できません。
3密を避けろ・・・
営業は22時まで・・・
黙っていても、お客さんが来ない状況なのに、お上が様々な制約を掛けてきますから、満足な売上など確保できるはずがありません。
本来ならば、見切りをつけて『閉店』や『廃業』をすべきなのかもしれませんが、環境がそれを許してくれません。
許さないというより、事業を継続し続けるように固められてしまっているというべきなのでしょう。
ジャブジャブの体制で、与信も関係なく、コロナ関連融資が実行されています・・・。
雇用調整金助成金は、湯水のごとく実行され続けています・・・。
家賃支援の給付金も用意され、無理をしてでも継続しなければ『損』という環境が出来上がってしまっているのです。
こんな環境で廃業など出来ないと、中小零細事業者は融資や助成金だけを頼りに、本当に無理をして事業を維持し継続しているのです。
この無理をした結果は、果たして、良い結果に結びつくのでしょうか。
画期的に景気が回復すれば、良い結果に結びつく可能性はありますが、その可能性は限りなく低いといえるでしょう。
そうなると、国や行政が、今以上の支援策を続けるしかないということになりますが、財政がそれを許し続けるとは思えません。
今、中小事業者が、無理をして事業を維持し続けても、このままでは、良い結果を得るのは難しいということになってしまいます・・・。
30年前のバブル崩壊直後、多くの経済人が、
『この不況は、この秋まで続くかもしれませんねぇ・・・』とか
『年度末にまでには、景気も回復するでしょう・・・』などと、呑気なことを言っていました。
今では笑い話になりますが、高度成長しか知らない経済人にとって、当時は当たり前の捉え方だったのだと思います。
中には、今がチャンスとばかりに、下落した不動産を購入したものの、その後も不動産の低迷が続き、大損された方も珍しくありませんでした。
そんな環境においても、中には、『損を抑える』方向で取組まれた経営者がおられました。
まだまだ景気は活性すると思われた平成2年初頭において、環境に疑問を感じ、株式や不動産を処分された経済人も少なくなかったのです。
それらの経済人の、処分姿勢に共通するのは、
資産を処分して、より多くの利益を確保しよう・・・ではなくて、
資産を処分して、少しでも損を抑えよう・・・・という考え方だったのです。
まだ、経済が活性している環境で、この様に考えられるのは凄いことだと思いますが、これこそ本当の経済人といえるのでしょう。
そして、この先の見えないコロナ禍の環境で苦闘されている中小事業者にとって、この『損を抑える』という考え方は、良い結果を得るために有効ではないでしょうか。
支援策などの制度を活用して事業を維持するにしても、儲けようと考えて取り組むのではなく、損をしないようにと取組むことが、良い結果に結びつくのだと思います。
まさしく、この環境は、『損して得取れ・・・』ということです。
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