経営危機という厳しい環境では、経営の知識や常識が通用しにくくなるものです。
熱心に勉強を積み重ね、真面目に経営に取り組んでおられる経営者ほど、経営危機の打開においては、スムーズに取り組めない傾向があります。
経営的な知識には劣るが、人付き合いの上手いポジティブな思考の経営者は、何故か、上手く経営危機を打開してしまうという傾向が見受けられます。
債権債務処理や経営危機打開の場面では、こんな事例が多く見受けられ、たまたま結果がそうなったのではなく、経営者のご性格が、そのような結果を呼び込むのではないかと思います。
中小企業の栄枯盛衰は、経営者次第だといえるでしょう。
経営者の能力や努力が、経営の成果に直結し、企業の業績を決定づけてしまうというのは、ある意味において当たり前なのかもしれません。
たしかに、経営者が一生懸命に勉強して、汗を流して熱心に取り組むことで、業績はそれなりに付いてくるといえるでしょう。
ところが、業績が悪化した後の、経営危機という厳しい環境では、経営者の能力や努力といったものは、通用しにくくなってしまうようです。
経営危機を打開するという場面で、多くのご相談にのってきた経験からいえるのですが、経営者の能力や努力よりも、経営者のご性格が、結果に大きな影響を与えているように思います。
経営者の持っておられ経営に関する知識は、経営危機という環境では、なかなか通用しません。
通用しないというよりも、その経営の知識が、経営危機においては邪魔になるとさえいえるのかもしれません。
健全時の経営に関する知識と、経営危機で求められる知識は、全く違ったものだといえるからです。
経営危機で通じない知識で、打開しようと努力しても、混乱をさせてしまうだけで、けっして良い結果には結び付きません。
たとえば、健全時の経営状況は財務諸表などから簡単に把握をできますが、経営危機の状況を把握するのは簡単ではありません。
財務諸表や経営分析における情報や結果は、経営危機であることは教えてくれますが、どの程度の経営危機状況なのかまでは判りようがないのです。
軽度の経営危機なのか、経営改善が必要な状況なのか、手の施しようもない状況に陥っているのかといった区別については、経営知識とは異なった独特の知識により判断されるものだからなのですが、この区別については更に厄介な問題があります。
それは経営者のご性格で、捉え方が大きく変わってしまうということです。
心配性なご性格の経営者であれば、なんの問題のない経営状況でも、倒産するのではないかと不安になってしまいます。
お気楽なご性格の経営者であれば、明日にでも不渡りを出してしまうような状況でも、何とかなると思っておられるかもしれません。
経営危機という状況においては、経営者の性格が、様々な面で大きな影響を与えるものなのです。
この経営者のご性格は、経営危機状況の判断だけではなく、経営危機を打開する取り組みにおいても、結果が大きく異なってしまうように思います。
経営危機という環境における経営者の、『損な性格』と『得な性格』に分けて考えれば分かりやすいかもしれません。
経営危機を打開するにおいて損なご性格というのは、我々コンサルタントが思い通りに展開が進まないという、難儀な案件の経営者のご性格ということになります。
再生に向けて前向きに考えられず、『上手くいかないだろう・・・』という失敗を前提に、取り組んでしまうご性格になります。
全てをネガティブに捉え、専門家の話を疑うくせに、ご自身で決断もできませんから、前に進まないのです。
さらに、多くの方にご相談をされて、複数の異なった意見を聞くことにより、状況をさらに複雑にしてしまうという傾向もあります。
要するに、必ず経営危機を打開して見せるという覚悟ないのでしょう。
経営危機における得なご性格の経営者というのは、この逆になります。
専門家の話を素直に聞くことができ、『何とかなるだろう・・・』という気持ちで取り組めるご性格です。
経営危機という厳しい状況においても、明るく前向きな姿勢で、常にポジティブに取り組まれます。
常に、自分に都合よく物事を捉えることができ、難しく考え過ぎないという傾向もあり、こんな経営者であれば、従業員も大きな不安を抱くことなく、自然と良い方向に展開するのではないでしょうか。
ご相談をさせていただいた結果を見直してみると、何故か上手く進まない案件と、妙に順調に進みすぎてしまう案件があります。
なぜ、その様に分かれるのか考えると、経営者のご性格という結論に至ってしまいます。
一般的に優秀といわれる経営者であればあるほど、経営危機に陥ると、打開への取組みが容易ではないという傾向が見受けられます。
逆に、要領が良くて、人の使い方の上手い経営者は、経営危機でも、前向きな姿勢の中で専門家を効果的に使い、良い結果につながるという傾向があるようです。
経営危機を打開しようとすれば、経営者としてのプライドを捨て去り、バカなほどポジティブに取り組めということになるのかもしれません。
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