任意整理と偏頗弁済・・・


資金繰りが厳しくなると、経営者は、偏頗弁済という言葉が脳裏を駆け巡るようになります。

偏頗とは、すこぶる偏っているという意味になり、支払の停止が必要な状況において、特定の債権者にだけ弁済を実施することを偏頗弁済といいます。

一般的には、偏頗弁済は違法的な行為であり、してはいけない悪い事であると思われていますが、破産という法的手続きにおいて対象となるものであり、任意整理においては対象とはならず、何でも偏頗弁済というのは危険な捉え方になると思います。

 

乱暴な表現になりますが、破産などの法的手続きではなく、任意整理に取組むのであれば、偏頗弁済について考慮する必要などないというのが現実なのです。

よく、偏頗弁済と詐害行為を同一視した表現を見受けますが、これは少し違うといえます。

偏頗弁済は詐害行為取消請求をされる行為に該当し、意味合いとしてもよく似てはいますが、対象となる状況と、追及する手続き、さらには導き出される結果が異なるのです。

詐害行為は、債務超過状況においてなされた行為であり、弁済が難しい状況や環境においてなされた行為であると規定されており、資産などを守るために差押などの法的手続きの効力が及ばないようにする行為のことになります。

そして、詐害行為の疑いがあるとすれば、債権者は詐害行為の取消請求を裁判所に申し立てる必要があります。

その結果、裁判所により詐害行為であるという判決があれば、詐害行為とされる行為が実施される前の状況に、債務者は戻さなければなりません。

偏頗弁済は、『支払の停止』があった以降に弁済されたものは『偏頗弁済』になると、破産法で規定されています。

この支払の停止とは、「債務者が,支払能力を欠くために一般的かつ継続的に債務の支払をすることができないと考えて,その旨を明示的又は黙示的に外部に表示する行為」のことであり、債務者自らが支払できませんという表明をするなどの手続きに入る状況のことになります。

破産などの法的手続きに入る場合、この支払の停止以降において、特定の債権者にだけ弁済を実施すると偏頗弁済とみなされます。

その様な、偏頗弁済とみなされる行為があった場合は・・・

   1. 破産などの申し立て代理人が、偏頗弁済を理由に受任してくれない。

   2. 破産管財人に、偏頗弁済であるとして否認される。

   3. 破産などは認められても、免責を受けられない。

この様な、可能性が出てきます。

破産をしようとしても破産出来なかったり、破産ができても免責が受けられなくなる可能性があるのですから、事業処理をしようとする経営者にとって、偏頗弁済は大きな意味を持つことになってしまうのです。

 

偏頗弁済を、中小零細事業者の立場で考えると、破産などの法的手続きに着手する場合において、『支払の停止』についての意思表示する直前以降に、偏った特定の債権者に弁済することにより偏頗弁済ということになってしまいます。

キーワードは、

   1. 破産などの法的手続きに着手

   2. 支払の停止についての意思表示

となりますので、偏頗弁済とならないためには、この2つのキーワードさえ避すれば良いということになります。

債権者平等の原則から、いついかなる時も偏頗弁済だと主張される方は少なくありませんが、偏頗弁済にも条件があり、難しく考えすぎる必要などないことが理解できるのではないでしょうか。

これについては、破産ではなく、任意整理を選択する場合に当てはめてみると判り易いでしょう。

我々が実施する任意整理は、裁判所や弁護士さんなどの力を借りずに、経営者自らが実施する整理のことです。

したがって、『破産などの法的手続きに着手』や『支払の停止についての意思表示』をすることがありません。

そうすると、偏頗弁済の対象にはならないということになります。

任意整理ですから、当然に偏頗的な弁済だらけの処理にはなりますが、ルールとして偏頗弁済として扱われないということなのです。

したがって、任意整理においては、取引先等の社会的弱者を守るために、偏頗的な弁済を前提とする処理手続きになりますから、偏頗弁済として追及されることを恐れずに取組むことが結果を担保することになるのでしょう。

また、大口の債権者で、劣後として扱われる金融機関が、この様な任意整理を納得するはずはありません。

同意してくれるはずはなく、当然に問題視をしてくるでしょうが、だからといって具体的に何ができるのでしょうか。

偏頗弁済をしたために、債権者金融機関等から厳しい追及を受けるのではと不安を感じるかもしれませんが、偏頗弁済をしなくても、期限の利益の喪失をした債権債務は厳しい追及を受けるものなのです。

ひょっとすれば、偏頗弁済をしたために、債権者が詐害行為取消請求をしてくるのではと不安に思われるかもしれませんが、現実の債権債務処理の世界で詐害行為取消請求がなされる事例はそれほど多いものではありません。

何よりも、取引先などを優先して偏頗的な弁済を実施しなければ、社会的弱者を守れないのですから躊躇する必要などないと思います。

また、債権者である金融機関に対して、任意整理について同意を得ようとされる方も少なくありませんが、よほど債権者金融機関に有利な条件でない限り、極めて難しいというのが現実です。

本音としては、任意整理において、債権者である金融機関に同意を得る必要はないということになります。

 

先日、私のブログの記事に対して、任意整理と偏頗弁済に関わるご質問をいただきました。

本日のブログは、そのご質問についての回答ということになりますが、偏頗弁済や詐害行為を、過度に恐れておられる経営者が多いのには驚かされます。

たしかに、配慮する必要はありますが、従業員や取引先等の社会的弱者を守るという優先すべきテーマがあるのですから、最低限の知識と配慮だけを持って、経営者としての本来の責任を全うすべきだと思います。

今、何が大事なのか、それを理解し優先することが、経営者としての責任ではないのでしょうか。

 

 

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