『資金繰りの苦労だけは、息子にさせたくはない・・・。』
経営危機打開に向けて、頑張っておられる企業の経営者の言葉です。
先々代より、設備器具の販売・施工を生業にされておられ、地元では名士の家柄です。
堅実な経営には定評があったのですが、斜陽産業ともいえる業界で、年々、売上は減少し粗利益率も低下してきました。
電気関連や建築リフォームなどにも進出され、様々な対策を実施されてきましたが、経営を根本的に改善するには至っていません。
そんな経営状況で、18年ほど前に新築した社屋の建設資金の借入返済負担が、今、資金繰りに大きく圧し掛かっています。
業務は、専務である長男が、5年ほど前から取り仕切るようになりました。
専務に決済権を集中した体制に、事業面から業務面、そして財務面のほとんどを移し、事業承継への準備は整っています。
しかし、中小企業経営の肝である資金繰りだけは、専務に任せようとされません。
『資金繰りが厳しいのは、私の責任だから、私が対応するのが当然です。』
『息子には、しんどい金の苦労などさせずに、経営を勉強して事業承継だけに没頭してほしい。』
経営者は、この様に話され、今も資金繰りはご自身で対応をされています。
資金繰りは、5年以前からも、楽ではありませんでした。
そして、専務が、経営を采配するようになってから、さらに資金繰りが難しくなってしまったのです。
業績が突然に悪化したわけでも、返済や支払が増加したわけでもありません。
資金繰りだけが、経営の主体から切り離されて、独り歩きをしたから難しくなったのです。
当たり前の事ですが、資金繰りを確保するためには、経営全般を見渡した対応が必要になります。
入金の予測・計画を基本に、資金の流れや動きを見渡し、不足が想定される様であれば、入金を早めたり資金を導入したり、支払を調整したりと、経営全般に対しての手当てが求められるのです。
ところが、専務に資金繰り以外の経営全てを任せることにより、資金繰りを実施する経営者には、経営の情報が迅速に集まらなくなってしまったのです。
資金繰りの基本となる入金予測さえ、正確に掴むのが難しくなり、タイミングも遅くなってしまっています。
2~3カ月後の売上予測など、具体的な根拠のない適当な数字しか計上できず、全く当てになりません。
支払の調整についても、経営者の直轄でなくなっていますから、担当者は良い顔をせずにスムーズに進まず、手間暇が掛かってしまいます。
これでは、迅速で正確な状況把握と対応を要する資金繰りが、前向きに進むはずがありません。
『資金繰りの苦労だけは、息子にさせたくはない・・・。』と思われる経営者の気持ちは理解できますが、資金繰りの確保を考えれば、こんなことは言ってはられません。
経営全般を采配して、もっとも理解している者が、資金繰りも担当をすべきなのです。
そして、事業承継も合わせて考えれば、長男である専務に、資金繰りも担当をさせるべきなのでしょう。
資金繰りの苦労は、経営者が元気なうちに、後継者にさせるべきだと思います。
何かあれば、いつでも経営者がフォロー出来るのです。
第二会社を作ったり、資産の予防保全対策を実施したり、整理も視野に入れるような究極の債務処理場面で、経営者として通用する後継者がいるにも関わらず、高齢の経営者だけが矢面に立って対応されることが少なくありません。
同じ様に、『息子に、こんな苦労は掛けたくない・・・。』と思って、後継者を巻き込まないようにされるのです。
連帯保証人等の保証債務を背負わさないようにするのは、当然であり大賛成です。
しかし、債務処理という、究極の経営が勉強出来る機会なのに、将来のある経営者候補をはずす必要があるのでしょうか。
後継者である息子の将来を考えるのなら、ここは金を払ってでも体験させる場面だと思います。
本当に、強いタフな経営者にするために、『資金繰りの苦労をさせ・・・。』、『息子に苦労を掛ける・・・』べき、なのではないでしょうか。
詳しい内容は、ホームページをご覧ください,
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