その専門家は、ただ『返済を止めろ!!』と、強く主張をされます。
自らの信ずる根拠を示しながら、返済を止めることだけが方法だと、状況や環境などお構いなしに説明をされるのです。
返済を止めること以外の方法や、置かれている環境や状況に適合した手段などには一切言及せず、何とか再生をさせたいという経営者の意志なども無視して、ただ、自らの主張だけをゴリ押しするようにしか受け止められません。
この主張の先にある結果について、この専門家は、責任をとれるのでしょうか・・・?
以前、ある専門家のセミナーを聞きに来てほしいと、知人から依頼をされて出かけました。
全国で700回以上開催をしているという、凄い人気のセミナーだと聞いていたのですが、講師は丸坊主で口ひげを生やしたチンピラの様な風体のお兄ちゃんです。
こんなお兄ちゃんが、事業再生や経営危機に陥った場合の対策という、人生の瀬戸際からの脱出法を話すというのですから、違和感を覚えて当然でしょう。
失敗したかぁ・・・と思いながら、眉をひそめて聞いていると、話は上手い。
だてに700回もセミナーを開催したわけではなく、セミナー講師としての話術は、なかなか高いレベルの様です。
まるで漫談師かと勘違いするほどであり、ついつい話に聞き入ってしまいます。
たしかに、軽い気持ちで聞くには、本当に面白いのですが、何かが違います。
聴衆は、お金を払って吉本新喜劇を見に来ているわけではなく、何とか事業を再生させたいとか、従業員や取引先を守りたいなどと、明日の見えない環境で人生をかけて踏ん張ろうとしている経営者ばかりなのです。
面白い話を聞きに来たわけではなく、なんとか、経営危機を打開する方法はないかと、藁にもすがる思いで来られているのです。
そんな聴衆に対して、ただ返済を止めろと、延々と主張を続けられます。
しかも、内容のレベルは、極めて低い。
7年ほど前に、自らが経営危機に陥り、専門家に助けられたので、この道を志したということで、私も含めて多くの専門家が歩んできた道になります。
そんな大志を抱いたのなら、しっかり勉強をすればいいのに、セミナーの内容は間違いだらけなのです。
笑ってしまう様な、間違った論法や捉え方が数えたらキリがないほど、さも真実の様に続きます。
聴衆は、知識のない経営者ですし、話はテンポよく面白いので、『そうか、利息を止めたらいいのか・・・』と、そう信じ込んで不思議ではないでしょう。
コンサルタントの手法は、様々に存在します。
事業再生や経営危機に関するコンサルタントも少なくありませんが、その取り組み手法は千差万別だといえるでしょう。
どの手法が良く、どの手法は悪いのかは、結果でしか判断できないのかしれませんが、大事なのは、責任をとれるのかということだと思います。
コンサルタントとして、事業再生や経営危機打開のプロとして、ご相談してくださった方に、満足のいくコンサルティングができるのかということになるのでしょう。
資金繰り厳しい中で、高いお金を支払ってまで、何かと経営危機を脱出したいとご相談くださったのですから、当然に無責任な対応はできません。
全力で、真摯に、ご相談者の環境や状況合わせて、最善の方向性を提案できてこそ、プロなのでしょう。
コンサルティングの結果について、責任があるのは当然なのです。
兄弟か親友になったつもりで、取り組んでこそ、経営危機は打開に向かうのだと思います。
ご相談者が、中小企業の経営者が、その事業と命を、最後に賭けてくださったのです。
ご相談者の状況も確認せずに、用意した答えに導くのはコンサルティングではありません。
ただ闇雲に、自分の知識のある返済停止だけを勧めるのは、プロではなく素人です。
最後の最後まで、責任をもって結果を求めることができなければ、事業再生や経営危機打開という場面に、専門家として関与する資格などありません。
上手くいったら、経営者の努力・・・
失敗したら、コンサルタントの責任・・・
経営危機では、これぐらいの考え方が必要なのだと思います。
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