『えっ、それでは話が違う・・・。』
金融機関の担当者に、悪意があるわけではありませんが、融資をお願いする場面では、騙されたような結果になることが少なくありません。
担当者の言葉を、都合よく捉え過ぎた結果なのでしょうが、健全な経営状況での融資話なら大きな問題にはなりません。
しかし、資金繰りに切迫したような厳しい経営状況で、この様なことが起きると、破綻に繋がりかねません。
そうならないために、経営者は自ら予防するという意識で、期限を切った取り組みが大事になります。
金融機関に、リスケジュールを申し込もうとすると、担当者から新規融資を提案されることは少なくありません。
資金繰りが厳しくなった状況において、新規融資は無理だろうと勝手に判断して、リスケジュールしかないと思っていたところですから、こんな有難い話はありません。
まさしく、渡りに船なのです。
金融機関担当者も、新規融資は難しくないという様な口調で話してくれますから、これで、一気に資金繰りの苦労から解放されると、ほっと安堵の息をつくことになります。
ところが、これで安心してしまうと、最悪の事態に陥る可能性があるのです。
リスケジュールを申し込もうとする経営環境は、余裕の少ない切羽詰まった状況ではないでしょうか。
資金繰りもキリキリで、先の見通せない厳しい状況に陥っているという可能性が高いでしょう。
そんな状況で、新規融資が実行されれば、たしかに資金繰りは改善し、時間的な余裕を確保することができて、経営改善に取り組むことも可能でしょう。
しかし・・・・。
もしも、新規融資が駄目だったら、どうなるのでしょうか。
新規融資の結果がでるまでには、相応の時間が必要になります。
プロパー融資であれば与信に時間が掛かり、信用保証協会の保証付き融資であれば保証協会の決済に時間が取られ、結構な時間が掛かることになりますが、その間は、健全な状況を維持しなければならないのです。
本来は、リスケジュールで、元本返済を棚上げしようと考えていたのに、新規融資を検討してもらっているのですから、当然に約定通りに返済を続けなければなりません。
リスケジュールが必要なほどの資金繰り状況では、これが大きな負担となります。
事業を維持するために、最低限の運転資金を手元に残して、リスケジュールに取組もうとしていたのに、その最低限の資金から元本返済をすることになるのです。
これで、もしも、新規融資が駄目であれば、事業の維持や継続が、極めて難しくなって当たり前ではないでしょうか。
この様なパターンで、経営破綻に追い込まれる中小企業は少なくありません。
新規融資が実行されるだろうという前提で、金融機関と健全な関係を維持するために、無理な努力を続けてきました。
しかし、金融機関担当者の発する、冷静な『新規融資は無理でした・・・』の一言で、一巻の終わりです。
金融機関担当者は、融資を実行すると断言などしませんから、約束破りでも、裏切りでもありません。
単に、新規融資が実行されるのでは・・・という、願望にすがった経営者が、甘かっただけのことなのです。
この様な、悲しい結末を迎えないためには、リスケジュールの予定を維持したうえで、新規融資とも向き合うことが不可欠だと思います。
我々は、リスケジュールに取り組む前には、何があっても事業を維持するという目的のもとで、必要な資産を保全したり、事業維持の施策を実施するなど準備をしたうえで、リスケジュールに取組みます。
リスケジュールは有事であると捉えての対応なのですが、無理のないタイムチャートを具体的に把握するようにしています。
いつの返済からリスケジュールしたいから、債権者金融機関にはこのタイミングでお願いにあがるという流れです。
この、『いつからリスケジュール・・・』と、『金融機関にお願いに行く・・・』、という2つのタイミングを、新規融資の話がでてきても変更しないことが重要になります。
新規融資を考えてくれる金融機関には、『金融機関にお願いに行く・・・』という予定の日程までに、新規融資の返事をしてくれるようにします。
新規融資が駄目となっても、それならばリスケジュールをという、自然な流れになります。
もしも、間に合わない場合でも、絶対に『いつからリスケジュール・・・』の予定までには、新規融資の返事をもらうようにしてください。
本来は、事前にリスケジュールのお願いをして、債権者金融機関等の同意を得たうえで実行すべきですが、この様な状況では、返済直前の強引なリスケジュールも仕方がないと思います。
やはり、リスケジュールに取組むにおいても、余裕を持って、少し早めに取り組むことが必要だということになるのでしょう。
金融機関の融資話に引き摺られ、タイミングを逸して、手遅れになる事例は少なくありません。
金融機関担当者も、好意を持って取り組もうとしてくれるのでしょうが、その行為が最悪の結果を招くことになってしまいます。
中小企業経営者は、常に、シミュレーションを実施して、様々な展開に対して、自ら予防することが大事なのです。
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