究極の資金繰り・・・1


資金繰りは、経営環境や状況によって、その難易度は極端に変わってしまいます。

健全な経営状況であれば、たいして負担のない作業ですが、経営悪化状況での資金繰りは、地獄の苦しみといえるほどの負担になるでしょう。

成り立たない計算式を、絶対に完成しなければならない、そんな厳しい負担なのです。

 

この『有事』においても必ず答を導けるよう、経営危機での資金繰りテクニックについて、過去のブログを参考にまとめ直して、三回に亘ってご紹介したいと思います。

 

資金繰りとは、期間ごとの資金の動きについて、あらかじめ収入と支出予測を対照させ、その過不足を調整することです。

資金に余裕があれば問題ありませんが、資金が不足するようなことになれば、収入を増やしたり支出を減少させたりして、資金が不足しないように調整することを資金繰りというのです。

要は、資金の動きを事前につかみ、不足分について対応することなのです。

こう考えると、それほど難しいことではないように思えますが、経営危機においては知識とテクニックを必要とする高度な経営術になります。

事前に資金の動きを掴むことも簡単ではありませんし、不足分をどの様に調整するかというのが難しいのです。

自社や自分の都合だけで対応できるものではなく、得意先や仕入先、さらには金融機関,従業員,租税公課関係等々の関係者との調整が必要となるものですから、小手先の対応で処理できるものではありません。

資金繰りの知識を持つことは当然のこと、関係者の特性や考え方を理解する必要がありますし、その後の動きをシミュレーションすることも求められるのです。


資金繰りの方法を大きく分けると、

  1. 資金の確保(収入の増加)
    ・借入
    ・資産の活用・換金化
    ・その他

  2. 支出の圧縮
    ・返済猶予
    ・支払い猶予
    ・その他

  3. 入出金の整理
    ・支払い条件の変更
    ・入出金の流れの整理
    ・その他

という3つに分けられ、それぞれに付則している内容の方法があり、さらに具体的な方法があります。

状況に合わせて、これらの方法を使って、資金繰りの確保をはかるのです。


ただし、資金が不足するという厳しい経営状況ですから、「冷静な状況判断の実行」と「信用不安の流出予防」について、常に留意しておく必要があります。

本業が赤字から脱皮できずに、今後の経営維持が難しい状況なのに、資金繰りの確保だけを優先していれば、事態は悪化し今後の展開が図れなくなってしまいます。

また、資金繰りを確保するために、決定的な信用不安に陥れば、何のための資金繰りか判らなくなってしまいます。

資金繰りにおいては、常に先を読み、状況を冷静に判断することが求められるのです。

資金繰りといえば、借入れというぐらいに、不足している資金を補填して資金繰りを確保するのは一般的です。

借入れによる資金繰り確保は、初期の資金繰り対策といえるもので、まず最初に取り組む典型的な方法になります。

しかし、初期に限って有効なものではなく、最終局面に亘るまで資金繰り全般において活用される方法でもあるのです。

ただ、借入れといっても債権者は様々であり、資金繰り悪化の進捗状況により、その債権者となる対象も変化していきます。


初期の借入れの対象は、銀行や信金信組等の金融機関でしょう。

借入れの債権者としては、もっともオーソドックスな対象者であり、経営が健全な状況における借入れの唯一の対象者でもあります。

金融機関からの借入れは、経営状況が健全であればプロパーでの借入れも可能でしょうが、経営環境や経営状況が少し悪化してくれば、金融機関は必ず信用保証協会の保障付融資を勧めてくるようになるでしょう。

金融機関からの借入れは、金利が低くて借入れリスクは少ないのですが、審査に時間が掛かり、審査も厳しい傾向になっています。

緊急時に間に合わないときもあり、その様な時に緊急避難的に使われるのが、代表者である社長や経営者からの借入れになります。

経営者等から借入れは、費用負担等が発生せず、審査もありませんから緊急時には都合が良いものです。

しかし、借入れ後は返済が後回しになることが多く、返済自体が難しくなることもあり、公私のけじめをつける意味でも、緊急避難の一時的な資金繰り対応と割り切って考えるべきだと思います。

この、金融機関もしくは経営者からの借入れが、資金繰り確保するための借入れの第一期になります。

この第一期は、資金繰りといっても、難しい状況での対応ではなく、健全時の資金繰りと考えて問題ないでしょう。


次の段階で使われるのが、ノンバンク等や親戚・知人からの借入れになります。

銀行等の金融機関が、信用保証協会の保証付きでも融資を断ってきた場合、本格的な資金不足に陥り本格的な資金繰りが必要な局面となります。

経営者としては、当然に経営の継続を前提に資金繰りをするのですが、この段階になると、資金繰りと同時に冷静な状況判断も必要になります。

このまま、無理をしてでも経営を継続するのが正解なのかどうか、冷静な判断のもとで十分に検討する必要があるのです。

銀行等の金融機関と違い、ノンバンク等や親戚・知人から借入れをすると、万が一の事態において大きな問題を抱えることになってしまいますから、この段階においての冷静な判断が必要であり、経営者としての決断が求められことになります。

継続の判断により、ノンバンク等や親戚・知人から借入れするとしても、短期間での返済を前提としておかないと、この借入が、様々な面で逆に経営の継続の足を引っ張ることになりかねませんから注意すべきでしょう。

第二期は、企業が生き残れるかどうかの瀬戸際であり、資金繰りのあらゆるテクニックを発揮する場面だといえます。


次の段階が第三期ですが、借入手法としては、消費者金融で社長個人が借入れして会社の運転資金につぎ込むか、街金や闇金から借入れをするかという局面になります。

いわゆる最終期の資金繰りなのですが、経営の結果が出ている場面での無駄な資金繰りでもあり、もはや資金繰りの意味さえないのかもしれません。

客観的に見れば、誰でも経営の継続が無理だと判断できるのですが、追い詰められて冷静さを失った経営者にはそんなこと理解出来ず、明日の資金繰りを何とかするしか頭にないのです。

第二期から第三期への移行は、本来は迎えるべきものではなく、この段階において経営者として最終判断を下すべきなのですが、現実には、多くの追い詰められた経営者が第三期を迎えてしまうようです。

第三期さえ迎えなければ、経営者の夜逃げや自殺が激減し、経営者の再起も容易になるのは間違いないと思います。


資金繰りにおいて、不足資金を借入れで補填する方法としては以上の流れになります。

借入の具体的な方法については、様々なサイトや専門書が出ていますので、このブログでは敢えてご説明はいたしません。

ただ、借入が、資金繰り悪化を助長するということも忘れずにいてください。

資金繰りが厳しくなったら、経営者は時間を作って、貸借対照表をゆっくりと眺めてください。

実は、貸借対象表は、宝の山かもしれません。

そこには、資金繰りのヒントが沢山隠れていますし、すぐに資金繰りが確保できるような宝が埋もれているかもしれないのです。

損益計算書は理解できても、貸借対照表は難しいといわれる経営者は多いようです。

損益計算書は直接に利益に直結し、日々、経営者が興味をもって確認する資料ですが、貸借対照表は会社の資産や負債の状況をまとめた資料であり、直接に利益とは関係ありませんから、普段はなかなか興味を持たれていないと思います。

決算書が出来た時に、税理士から説明を受けるために目を通すぐらいではないでしょうか。

しかし、資金繰りを確保するには、この貸借対照表を活用することが有効なのです。

貸借対象表を読み取ることで、粉飾でもしていない限り、おおよその会社の経営状況が判るものです。

同時に、資金繰りの算段のヒントも、貸借対象表に散りばめられていることが判ります。

貸借対照表には、会社の資産が事細かに載せられており、熟読すれば、その資産の活用状況から収益性まで確認できるのです。

だからこそ、資金繰りが厳しなった時に、会社の資産を有効に活用するために、貸借対照表をじっくりと見つめ直してみるのです。


初期段階の第一期なら、まず預金関係を洗い出して、意味なく金融機関に預けている定期預金などがあれば、解約して運転資金に充当してみましょう。

有価証券,会員権等については、売却して資金化するのも資金繰り確保には有効な方法だと思います。

また、不動産についても、第一期での対応が大事であり、遊休不動産があれば、少しでも収益を確保するために賃貸を検討してみてはいかがでしょう。


第二期においては、まず保険積立金の活用が考えられます。

解約して、中途解約金を受け取るのも方法ではありますが、いざという時のための保険なのですから、解約せずに積み立ての範囲のなかで借入をされてはいかがでしょう。

金利は高いですが、ほぼ積立額の借入が可能ですので、資金繰りには有効な方法になると思います。

続いて、機械・工具や車両等の動産を見渡して、今現在において活用していないものがあれば、思い切って売却して少しでも資金として確保していきましょう。

不動産も、この段階に至っては、有効に活用されていないものは売却を考える必要があります。

担保との絡みがありますが、任意売却をすれば、借入弁済に充当して返済負担を軽減できますし、ある程度資金を資金繰りに充当するのも不可能ではありません。

この段階いては、不要な資産を眠らせずに、資金化できる資産は全て活用してしまうということがポイントになります。


資金繰り確保の第三期において、貸借対照表から何を読み取るかは難しいものがあります。

この段階においては、資産の活用はほぼ終わっているでしょうから、負債に目を向けることになりますが、負債を活用する方法などはありません。

負債は、借入金や未払金等になりますから、資金繰りの確保として考えると、支出としての流出を防ぐということになります。

第二期にも共通するところはありますが、返済猶予や支払い猶予という方法による資金繰り確保であり、信用不安を引き起こす可能性が高いので注意してください。

貸借対照表からは、もっと多くのことが読み取れ、多くの対策が可能ですので、ご自身で読み取ることが難しければ、税理士等の専門家に聞いてでも活用されることをお勧めいたします。

資金繰り確保の全般にいえることですが、本来、資金繰りの対策は極めて簡単で単純なものばかりなのです。

理屈さえ理解して、順序さえ間違わなければ難しいものではないでしょう。

その中でも、もっとも単純で効果的な対策が『入出金の流れの整理』になるのではないでしょうか。

『入出金の流れの整理』は、入金後の出金を原則に整理するというもので、資金繰り対策としては初期の対策になります。

また、長期的にも効果のある方法なので、健全な経営時における予防策と考えるべきなのかもしれません。

入出金の流れを整理するだけで、資金繰りは大きく改善する可能性が高く、資金繰り確保のためには効果的な対策なのですが、現実的にはタイムリーに実施されている事例は極めて少ないと思います。

こんな有効な手段が、効果的に活用されていない理由と思われるのは、経営者のプライドと甘い考えではないでしょうか。

経営者は総じてプライドが高く、中小零細企業の経営者といえども、生半可なプライドの持ち主ではなく、そのプライドか、仕入先等の関係者に資金繰りが厳しいとは絶対に思われたくないと考えています。

したがって、初期の資金繰り対策として、未だ余裕のある段階において入出金の流れの整理をするなど、なかなか手を付けることが出来ないのです。

対策ですから、後手になればなるほど効果は薄れますので、タイムリーに一気に対策として実行すべきで、その効果は極めて大きいものです。

大企業ならいざしらず、体力のない中小零細企業が、経営者のブライドで見栄を張っていては、せっかくの資金繰り確保や経営改善のチャンスを逃してしまいますから、初期段階であろうと、まだ余裕がある段階であろうと、この『入出金の流れの整理』という効果的な対策を一気に実行しなければなりません。


まず、得意先には、入金の条件を良くしてもらうように働きかけます。

確実な入金予定の確認に始まり、入金サイトの短縮や、手形決済を現金決済に変更してもらうなど、入金の流れを明確に早くする努力から始めます。

また、何らかの理由で未収になっている売掛金があれば、全力で回収しなければなりません。

10万円の未収は10万円の未収ではなく、利益としての損失になりますから、売上でいうならば利益率5%として200万円の損失になるのです。

こう考えると、どんなことがあっても回収しなければなりませんし、すぐの回収が無理ならば、なんらかの保証や担保をとる必要もあります。


入金と同時に出金の調整もしてみましょう。

出金に関して特に留意することは、徐々に支払い条件を悪化させて信用を失うようなことは絶対に避け、一気に出金の流れを整理することです。

基本は、入金後の出金です。

入金が月末に多いのならば、定時支払いを入金後にして翌月の頭にするだけで、約一ヶ月分の資金繰りの余裕ができることになります。

また、契約段階において、支払い条件を入金後にしておくことも有効です。


特に建設業に多いのですが、日本では、入金前の先払いが当たり前のようにおこなわれています。

昔からの慣例で、人件費の支払いなどは先払いが当然で、すぐに実施されています。

景気が良くて利益率の高い時代なら対応できても、この厳しい経営環境の中で、こんな支払いをしていては資金繰りが確保できるはずがないと思います。

入出金の流れの整理は極めて効果的な資金具の確保の対策ですので、今後の経営を考えて、出来るだけ早く、余裕のあるうちに断固実行してください。

資金繰りの対策として、もっとも使われているのは、役員資産を活用することではないでしょうか。

初期から終期までの全般に亘る資金繰りにおいて、もっとも簡単な資金繰りとして多用されています。


よく勘違いされていますが、中小零細企業といえども、企業と経営者の人格は別です。

代表取締役だからといって、保証もしていない企業の債務に対して、個人として責任を追及されることなどはありえません。

しかし、これは法的にという建前論においてであり、本音の部分や道義的な部分においては違ってきます。

そして、この建前と本音をどう使い分けるかが、債権債務の処理全般において大事なキーポイントともなってくるのです。


資金繰りにおいては、本音の部分として、企業と経営者は同体であると考えるべきだと思います。

中小零細企業は、実質的に経営者の所有であるという側面があります。

また、何よりも、金融機関を代表とする債権者が、企業と経営者は同体であるという見方で対応してきます。

公私混同と捉えられるのはまずいですが、資金繰りにおいては、債権者の見方に合わせて考えるしかないでしょう。


役員資産を活用した資金繰り対策として、代表的なのは次の3タイプになります。

1. 企業の借入の担保として、経営者の自宅を物上保証として提供する。

2. 経営者の個人資金を、直接に会社に提供する。

3. 経営者が個人として借入して、その資金を会社に提供する。


会社の借入について、経営者の自宅を担保として提供するのは、一般的に用いられている方法です。

金融機関も当然のように担保として要求してくることが多いようですから、資金繰りを考えれば、経営者として容認しなければならないでしょう。


経営者が、個人の資金を提供するのもよく見かけます。

急に、入金が遅れて資金が必要になったり、借入の目途が立たなかった場合などに多いようです。

また、会社では、もうどこの金融機関も貸してくれなくなり、経営者が個人で消費者金融やクレジットで借入をして、その資金を会社に提供するのも珍しくはありません。

経営者が資金を提供して、資金繰りを確保するのはけっして否定すべきことではありません。

しかし、状況によるということだけは忘れないでください。

資金繰り確保の対策は、あくまでも経営の継続が前提であり、経営改善のプロセスにより再生が可能だから実施するのです。

実質、経営が破たんしているのに、冷静な判断能力を喪失して、個人資産を提供して資金繰りを確保する経営者がおられますが、これは全く意味がありません。

この段階においては、企業と経営者の人格は別という建前論で対応すべきであり、意味もなく経営者の個人資産を資金繰りに提供すべきではないでしょう。

  詳しい内容は、ホームページをご覧ください,

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