今回の民法改正により、事業用資金の借入の保証人に事業主以外がなる場合は公正証書の作成と、根保証契約の限度額の設定について義務付けられました。
批判の多かった保証人制度も、ようやく改善をされ、第3者の保証人が悲惨な状況に追い込まれる可能性は、ほぼ無くなったといえるでしょう。
この改正は、万雷の拍手を浴びる価値のあるものですが、これで全てが上手くいく訳でもありません。
保証人を保護するために改正された民法は、同時に、中小零細事業者に新たな問題も投げかけています。
世の中、全てが上手くいくことなど、なかなかあり得ないように思います。
今回の民法改正においても、保証人の保護については、間違いなく改善をされましたが、改正により新たな実務面の問題が発生しそうなのです。
しかも、中小零細事業者の経営に与える影響は、かなり大きなものになる可能性があります。
そんな、想定される問題点の概要について、具体的に把握していきたいと思いますが、代表的な問題については、既に多くの読者はお気づきのことだと思います。
そう、保証人の確保が難しくなるということです。
ただでさえ、現状においても保証人のなり手は少ないのです。
債権者である金融機関は、債権回収を保全するために、前提として保証人を取ろうとします。
たしかに、債権回収に不安のない健全経営の事業者ならば、保証人も不要で融資が可能かもしれません。
しかし、本当に融資を必要とする多くの中小零細事業者は、債権回収の面において不安を抱えています。
したがって、金融機関は、保証人を取って債権回収を保全しようとし、保証人が確保できなければ、融資をしないというのが実態です。
今までは、家族や親類,友人,知人等に頭を下げ、無理を言って、何とか保証人になってもらっていました。
しかし、公証人役場に行って、公正証書を作成することを要求されてまで、保証人になってくれるでしょうか。
公正証書が、裁判の確定判決と同じ効力を持つと知っても、保証人になってくれるのでしょうか。
私ならば、公正証書を作成してまでの保証人には、絶対にならないと思います。
保証人を依頼してきた事業者との関係で、どうしても断れずに、公正証書を作成してでも保証人を受ける方もおられるでしょうが、その絶対数は、間違いなく大幅な減少をするでしょう。
したがって、本当に融資が必要な事業者が、保証人を確保できずに、融資を受けられないという状況が、容易に想定できます。
民法改正以降、融資を受けて、資金繰りを確保することが難しくなるかもしれません。
保証人を保護したがために、保証人のなり手が減少するのです。
せっかく保証人になってもらっても、突然に保証人でなくなる可能性もあります。
この民法改正において、誤った情報を伝えたり、必要な情報を提供しなかったりした場合、保証契約を取り消すことが出来る規定が新設されたのです。
保証契約の前提が、公正証書になりますから、正確な情報が伝えられているとは思います。
ただ、どのような範囲で、との程度まで説明しなければならないかについて、具体的に定められていません。
したがって、保証債務の追及を受ける様な場面に陥った時に、『話が違う・・・』,『そんな話は聞いていない・・・』と保証人に主張されると、保証契約が取り消されるかもしれないということなのです。
また、事業資金の借入を保証する際、公正証書を義務付けられたわけですが、この事業資金にも注意しなければなりません。
表現を変えると、事業資金の借入でなければ、保証をする際に公正証書の作成は不要だということになるのです。
したがって、事業資金なのか、事業資金ではないのかということが、大きなポイントとなります。
実際は事業資金なのに、事業資金ではないと保証人に説明したり、違いの線引きも曖昧であり、判断は難しくなると思われます。
この二点について問題になれば、最終的には裁判になると思います。
しかし、裁判になっても、その判断は難しく、裁判官により判断は分かれるのではないでしょうか。
多くの事例の発生により、問題の答えを求めるしかないのかもしれません。
今回の民法改正により、保証人の保護は格段に改善されました。
しかし、同時に、保証人を依頼する側の中小零細事業者の融資は、格段に難しくなったともいえます。
今後、保証人の確保に最大限の留意が必要になったと共に、資金繰り確保の新たな手段を、模索する必要があるのかもしれません。
詳しい内容は、ホームページをご覧ください,
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